第2のカメ止め?綾野剛も注目『メランコリック』が話題
無名の新人監督による低予算の自主制作映画にもかかわらず、国内外の映画祭で絶賛の声を集め、「第2のカメ止め?」と話題になっている映画がある。その名も『メランコリック』だ。
今月3日から劇場公開された同作は、これが長編初作品となる田中征爾(せいじ)監督がオリジナル脚本・編集を手掛けたサスペンスコメディー。東京大学を卒業後、うだつの上がらぬ生活を送っていた主人公・和彦(皆川暢二)は、たまたま訪れた銭湯でバイトを始めることになるが、その銭湯は閉店後の深夜、風呂場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る。
田中監督は日本大学芸術学部を中退し、アメリカ留学で映画を学んだ経験を持つ現在31歳。平日はIT系のベンチャー企業でサラリーマンとして働いているため、撮影は金曜の夜から日曜の昼間までを使った計10日間、製作費は『カメラを止めるな!』と同等の300万円ほどで行われた。
本作が注目を浴びるきっかけとなったのが、昨年の東京国際映画祭。独創性とチャレンジ精神にあふれる作品を監督のキャリアを問わず紹介する「日本映画スプラッシュ部門」に出品され、監督賞を受賞。そこから海外にも広がり、前年に日本で公開されて大ヒットする前の『カメ止め』が上映され、観客賞第2位を獲得したことでも注目されるイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭では新人監督作品賞に輝いた。
公開前からクチコミで徐々に話題を集め、俳優の綾野剛もInstagramのストーリーで「監督、脚本、編集を全て兼任した確信犯的意欲作は、狂感でしかない。必ず映画館で受け止めたい」と反応。『カメ止め』の上田慎一郎監督はTwitterで「銭湯×バイオレンス×ラブ×バディもの×青春…映画の旨味がギュッと詰まった逸品! 最初は『めんどくせぇ!』と思ってた主人公をいつの間にか応援してた」と絶賛した。
公開初週の土日、都内のアップリンク渋谷では全回満席の大盛況。その様子に『カメ止め』の上田監督も「こここ、この光景は…!?去年の夏がフラッシュバック。いけいけメランコリック!日本の憂鬱をぶっとばせ!」とTwitterでエール。『メランコリック』は間違いなく、この夏、大注目の一作だ。(編集部・中山雄一朗)