中井和哉、ゾロは「もう一段上」にいけるキャラクター
尾田栄一郎の原作による人気アニメ「ONE PIECE ワンピース」の放送20周年を記念した『劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』』。世界一の大剣豪を目指す海賊狩りのロロノア・ゾロ役の中井和哉がゾロ、ONE PIECE、そして今作について語った。
「こういう風に出てきてくれたら嬉しいよねという形でキャラクターが登場する」と本作の台本を読んだとき率直に思ったという中井。この言葉通り、アニメ放送20周年記念にふさわしくオールスターがそろった。「本当に盛り上げ上手ですよね」と笑う。
そんななか、ゾロの役割について「今回は結構シリアスな戦いが展開されていくのですが、麦わらの一味のなかで、強さの象徴として働かなければいけないと思った」と語ると「いまのゾロの立ち位置を、変にひねることなく提示されている感じがして、やらなければいけないことがはっきりしている立場だった」と感想を述べる。
劇中では、大将・“藤虎”イッショウとの対峙もみられる。「なにぶん藤虎なので……」と苦笑いを浮かべると「そこらの敵役とは格が違うという緊張感がありますよね。テレビシリーズで藤虎と対峙したときもそうですが、ゾロでも100でいかないとダメだという意識は強かった」とアフレコを振り返った。
ゾロは、ルフィの最初の仲間として“麦わらの一味”のなかでも非常に人気が高いキャラクターだが「毎週の積み重ねでの20年という数字には重みを感じますが、正直『ONE PIECE』に関していえば、長いことやってきたなという感じがあんまりないんです」と胸の内を明かす。ストイックに強さを追求し、成長も感じられるゾロだが「キャラクターを変えようと思ったことはない」と断言する。唯一、シャボンディ諸島に集まったとき、2年の歳月が流れていたため、ディレクターからは「再登場の一発目に関しては『前とは少し違う感じを出してくれ』と言われました」と振り返る。
ゾロを演じるうえで大切にしていることは「嘘をつかない、約束を守る」と一本筋の通った人間であることを表現すること。「ずいぶん前のことですが、(ルフィ役の田中)真弓さんに『マイクの前に立つとキリっとした顔になるね』と言われたことがあります。自然とそうなっているんでしょうね」
キャラクターごとの個性的な技名が多い「ONE PIECE」の中でも、ゾロが繰り出す技は特に魅力的だ。中井は「今作でもありましたが『一大・三千・大千・世界(いちだいさんぜんだいせんせかい)』は言っていて気持ちがいいですね。逆に『獅子歌歌(ししそんそん)』は言いづらいから嫌い(笑)。でもゾロの技ってどこから引っ張ってきたんだろうという言葉が多いですよね」と楽しそうに語っていた。
ゾロとサンジは物語のなかでも、言い争いになることが多い。「平田(広明)さんは大先輩で尊敬しているので、罵り合うのは恐れ多いと思って演じていますが『お前とは違った方法で格好良さを表現してやるよ』みたいにサラッと演じられているのを見ると、本当にすごいなと思います」と尊敬のまなざしを向けた。
平田だけではなく、“麦わらの一味”の仲間たちは「大先輩であり、ある種、怪物的なすごい方たちばかり。そこまでベタベタ仲がいいわけではないのですが、特別な存在です」と語ると「どこまでも続いてほしい作品ではありますが、一方で、尾田先生がベストだと思っているところで、すっぱり完結を迎えられればそれでいいという思いもあります」と複雑な思いを吐露した。
長年ゾロを演じているが「常に含みを抱えていて、もう一段上にいけるキャラクター。僕がゾロのなにを知っているわけでもありませんが、演じる側も、受け取る側も『ゾロってこういう部分があるんじゃないかな』とロマンの余白をずっと持っていてほしい」と熱い思いを語っていた。(取材・文:磯部正和)
『劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』』は8月9日より全国公開