オダギリジョー、長編初監督作お披露目に「何倍も緊張」
俳優のオダギリジョーが21日、都内で行われた自身初の長編監督作『ある船頭の話』(9月13日公開)完成披露試写会に登壇。「いつもより何倍も緊張しています」と話す中、ぶっちゃけトークも交え、本作に込めた思いや撮影エピソードを伝えた。この日は、主演の柄本明、川島鈴遥(りりか)、村上虹郎も来場した。
オダギリ自身、「挑戦的で見づらいかもしれない」と語る本作は、文明の波や時代の移り変わりに直面した山奥の村を舞台に「本当に人間らしい生き方とは何か」を世に問う衝撃作。撮影監督に名カメラマンのクリストファー・ドイル、衣装デザインに黒澤明監督作『乱』でアカデミー賞を受賞したワダエミ、音楽にアルメニアの世界的ジャズピアニスト、ティグラン・ハマシアンと豪華布陣が集結している。
オダギリは「普段は俳優として舞台あいさつに立つことが多いので、今日は初めて監督としてこういう経験をしていて、いつもより何倍も緊張しています」と切り出すと、初めて観客に披露することについても「どういう反応が起こるのか心配でもあり、不安、期待、いろんな気持ちがあります」と心境を吐露。とはいえ、「今更直すこともできない」と吹っ切ると、「どういう感想を持たれたとしても、いい部分だけをいろんな人に伝えてもらいたいと思います」と都合よく呼び掛け、会場の笑いを誘った。
キャスティングについては「ちゃんと事務所を通しました」と笑わせつつ、「同業者の中でも好きな方、嫌いな方いますが、好きな方に声を掛けました」とぶっちゃけ。ところが、現場のムードは微妙だった様子。というのも、昨年7、8月の猛暑の中、岩場や船上での撮影は日陰という逃げ場がなく、さらにほとんど出ずっぱりの柄本は「過酷」「大変」という言葉を連呼。村上も柄本から「孫のよう」と可愛がられているが、現場では「過酷すぎて、何かをしゃべった記憶がないです」と明かしてオダギリを苦笑いさせていた。
しかし、そんなキャスト陣の頑張りもあって作品は無事に完成。オダギリはクリストファー・ドイルが撮影監督を務めてくれたからこそ、「画だけ見ると、日本だけど日本じゃないように感じる」とその手腕を称賛。衣装デザインのワダエミに関しても、「家にある貴重な生地をたくさん使っていただきました。ギャラは少なかったと思いますが、お金にならない仕事に、それ以上の形で返していただいて感謝しています」と謝辞を述べた。
本作は8月28日より開催される第76回ベネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門への出品も決定しており、オダギリは「身が引き締まりますね」と感慨深げ。「イタリアの監督協会が選んでくれている部門で、商業性やエンターテイメント性に目を向けた方ではなく、作家性の部門」であることを挙げ、「日本だと俳優オダギリジョーというフィルターを必ずつけられるけど、それがないかたちで評価していただけたのはうれしいですね」と喜びをかみしめていた。(取材:錦怜那)
映画『ある船頭の話』は9月13日より全国公開