神木隆之介、怖かったたけしに「器が無限大」 大河で師弟役共演
大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合・日曜20時~ほか)で、ビートたけしと師弟役で共演した神木隆之介が、数か月にわたって共演したたけしの印象を振り返った。神木は、本作で落語家・古今亭志ん生(ビートたけし)の弟子、五りんを演じている。
日本人初のオリンピック選手、金栗四三(かなくり・しそう/中村勘九郎)と、日本に初めてオリンピックを招致した田畑政治(たばた・まさじ/阿部サダヲ)の2人を主人公に、オリンピックを通して激動の近現代史を描く本作。神木演じる五りんは、志ん生が語る架空の落語「オリムピック噺(ばなし)」を高座でたびたび引き継ぎ、披露している。落語にさほど興味がないにもかかわらず志ん生に弟子入りするが、金栗と志ん生を結ぶ役割を担った存在でもある。
神木は落語家を演じることについて、「もう、いっぱいいっぱいで、ただ一生懸命です」と苦戦したことに触れ、「最初の話では、五りんは落語をやらない、やる気がない落語家だからというので安心していたんです。でも第11回くらいから『あれ? めちゃくちゃ難しいじゃん』となって……」と苦笑い。
落語指導では、扇子や手ぬぐいの使い方、所作や目線、顔の左右の振り分けなどを習ったが「(五りんは)オリジナルキャラクターなので、手本があるわけではないところが難しかった」という。その一方で、視聴者の目線に一番近い人物であることを意識し、「噛むことを恐れず、楽しんで、まず一回やってみようと。それが、テレビを観ている人にも伝わったらいい」と役をつかんでいった経緯を明かす。
師匠・志ん生役のビートたけしの印象を尋ねると「番組の制作発表の時にお会いして『あっアウトレイジだ』(北野武監督のヤクザ映画)と思ったのは、体感でもう10年くらい前の感覚ですね。世界の北野監督ですし、芸人さんとしてもなかなか近寄れない方で勝手に怖いと思っていました」とファーストインプレッションを振り返った。
だが弟子の五りんを演じる上では、近寄りがたい感覚をなくすことが不可欠だった。「五りんは志ん生師匠をすごい人と思っていないし、失礼な態度も取るんです。自分がたけしさんに気を使っていたら、それが演技に出てしまう。(たけしに)怒られてもいいから、自分から積極的に話しかけ、質問もしよう。怒られたら、これが僕の役だからと言うしかない」と腹を括った。
そんな恐る恐るの神木に、たけしの反応は「僕の質問にもずっと付き合ってくださって、本当に優しかった」とのこと。「すごいと言われる人って、器が無限大なんだなと思いました」としみじみ。たけしとの心に残るシーンについて「この先(たけしを)おんぶするシーンがあるんですが、下り坂で、ここで前に転ぶことは絶対に避けなければいけないと思いながらやりました。『師匠、ちょっと体を上にお願いします』と言うと、おんぶしやすいように体を上げてくださいました」と笑顔で語っていた。
昨夜(13日)放送の第39回「懐かしの満州」では、脳出血で倒れるも一命をとりとめた志ん生が、戦争中、満州へ兵士たちの慰問興行に行った際のことを五りんに語った。その中で、実は志ん生が五りんの父・小松勝(仲野太賀)と深いかかわりがあったこと、第1回で五りんが志ん生に見せた母のハガキにあった古典落語「富久(とみきゅう)」にまつわるエピソードが明かされた。(取材・文/岸田智)