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実話に基づくインドのラップ映画、女性監督が明かす製作秘話

ジャパンプレミアに出席したゾーヤー・アクタル監督(左)と脚本のリーマー・カーグティ(右)
ジャパンプレミアに出席したゾーヤー・アクタル監督(左)と脚本のリーマー・カーグティ(右)

 スラム出身の青年がラップと出会ったことで人生を切り開いていく、実話を基にしたインド映画『ガリーボーイ』のジャパンプレミアが5日、新宿ピカデリーで行われ、来日中のゾーヤー・アクタル監督がリーマ・カグティ(脚本)と共に出席。観客の大きな拍手で迎えられたアクタル監督は、「11歳の時以来の来日で、自分の映画を持って、また日本に戻って来られるなんて、最高の気分です」と興奮気味に語った。

【動画】『ガリーボーイ』出演者、日本のファンにメッセージ!

 インドで活躍する若きラッパー、Naezy(ネィズィー)とDivine(ディヴァイン)の半生を基にした本作。貧困層が暮らすスラムで生まれ育った大学生のムラドがラップと出会い、「ガリーボーイ(路地裏の少年)」と名乗って鬱屈した日々の気持ちをリリックに込め、フリースタイルラップ・バトルで優勝を目指すさまを描く。アメリカの有名ラッパー・NAS(ナズ)がプロデューサーとして参加している。

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 映画の題材に若きラッパーを選んだ理由について、「たまたまYouTubeで観たNaezyのMVが強烈に焼きついて、しばらく頭から離れなくなりました」と語るアクタル監督。「彼らのサクセスストーリーには、面白いものがあるのではないか」という直感があったそうで、Naezy本人とコンタクトを取った際、会って軽くあいさつするつもりが「気づいたら、彼と3時間話し込んでいました」と振り返る。

 主人公ムラドを演じるのは、『パドマーワト 女神の誕生』(2018)も記憶に新しい、インド映画界で旬な俳優ランヴィール・シン。ランヴィールを起用した理由を、アクタル監督は「シンとは以前からの知り合いで、私の映画に出てもらうのは2回目。人柄もわかるし安心感がありました。それと、彼が周囲には言わず趣味でラップをやっていることも知っていて、脚本は彼を想定して作っていました」と説明した。

 アクタル監督は、第22回東京国際映画祭でも上映された『チャンスをつかめ!』(2009)で監督デビュー。大物監督たちと組んだオムニバス作品などを経て、米アカデミー賞主催の映画芸術科学アカデミーより新規会員の招待を受けるなど、ボリウッドの実力派女性監督として認知されている。一方のカーグティも、本業は映画監督で、日本未公開ながら『ゴールド(原題) / Gold』(2018)など骨太な作品を手がけ、アクタル監督とは共同で脚本を執筆したりと協力関係が続いている。監督は、「カーグティとは20年以上の付き合いです。でも自分の作品となると、お互い、殺し合いに発展するんじゃないかと思うくらい、ケンカもしたし、熱の入ったやりとりを繰り返しました。それでも共同作業を続けているのは、根底にある価値観が同じということです」と盟友への絶大な信頼を寄せているという。

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 撮影現場には、常に現役ラッパーが数十人も駆けつけ、ラッパーたちが持つ空気感が自然と醸成されていったという。アクタル監督は、「NASが快諾してくれて、この作品に関わってくれたこともうれしいです。みんなが師と仰ぐ存在ですから」と感謝しつつ、「NaezyとDivineも『(本作で)ヒップホップが多くの観客に届く機会になる』と喜んでくれています」と嬉しそうに語っていた。

 イベントの最後には、サプライズとしてランヴィール(ムラド役)、シッダーント・チャトゥルヴェーディー(MC Sher役)、カルキ・ケクラン(スカイ役)の出演者3名による、日本のファンへのメッセージ映像も上映された。ランヴィールは「日本は日の出がきれいな国だって聞いているよ。行ってみたいな」とコメントを寄せたほか、「俺の時代は来てる そうだ 時代は来る」とラップも披露するなど、観客も大喜びだった。(取材・文/岸田智)

映画『ガリーボーイ』は10月18日より新宿ピカデリーほか全国公開

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