オダギリジョー、監督作に本気の呼びかけ「音のいい劇場で」
オダギリジョーが13日、都内・武蔵野新宿館で行われた長編初監督作『ある船頭の話』の初日舞台あいさつに、キャストの柄本明、村上虹郎、川島鈴遥と共に登壇。ウォン・カーウァイ作品などで知られる名カメラマンのクリストファー・ドイルから「日本映画の伝統に深い敬意が込められている。素晴らしい作品に乾杯」と祝福のビデオメッセージが届き、「冗談も言わずに、ちゃんとしゃべってましたね」と盟友となったドイルの言葉に照れつつ公開を喜んだ。
本作は、文明の波や移り変わりに直面した山奥の村を舞台に、主人公の船頭・トイチ(柄本明)が、一人の少女(川島鈴遥)と出会ったのを機に、平穏な日々が一変していくさまを描く。オダギリとゆかりのある実力派キャストが集結したほか、スタッフも豪華布陣。撮影監督に『花様年華(かようねんか)』などのクリストファー・ドイル、衣装デザインに黒澤明監督『乱』でアカデミー賞を受賞したワダエミ、音楽にアルメニアの世界的ジャズピアニスト、ティグラン・ハマシアン。先ごろ行われた第76回ベネチア国際映画祭「ベニス・デイズ」部門に出品され、現地で大きな反響があった。
進行役から、ベネチア国際映画祭に出席した感想を聞かれたオダギリは「観客のあまりの反応の良さに恐縮しちゃいました」と言いつつ「でも今だから言いますが、エンドロールが流れてすぐ拍手が始まったんだけど、エンドロールも結構力を入れて作ったので、最後までしっかり観て拍手してほしかったです」と軽妙な口調で笑いを誘発。
独特の軽口かと思いきや、続けてオダギリは、国内の上映劇場(立川、横浜)に自ら足を運んで「劇場の広さによって微妙な違いがあるので、色と音のバランスをチェックさせてもらった」とのことで、「とにかく音にこだわって作ったので、大きな画面で、音のいい劇場で観てほしい。スマホじゃ、この作品の本当にいいところは、半分も伝わらないんじゃないかな。DVDや配信じゃなく劇場で」と力を込める。
ベネチア出品の後、本作には釜山国際映画祭(韓国)、モントリオール国際映画祭(カナダ)のほか、香港、ハワイ、エジプトなど多数の国際映画祭から出品のオファーがあったという。オダギリは「エジプト行きは『時効警察』打ち上げの次の日なので、打ち上げの盛り上がりによっては行けないかも」とジョークを交えつつ、エジプトという言葉に目を輝かせた川島に「エジプト、行ってみる? みんなで分け合って行ってもらおうかな」と壇上のキャストに笑顔で声をかけた。(取材・文/岸田智)
映画『ある船頭の話』は全国公開中