吉沢亮、歌唱シーンの裏話明かす!『空の青さを知る人よ』でアニメ声優初挑戦
アニメーション映画『空の青さを知る人よ』(10月11日公開)で声優を務めた吉沢亮と若山詩音、監督の長井龍雪、キャラクターデザイン・総作画監督の田中将賀が取材に応じ、アフレコの裏側など作品の背景について語った。本作でアニメ声優に初挑戦した吉沢は、声による2役の演じ分けや、歌唱シーンに挑んだ苦労を明かした。
物語の舞台は山に囲まれた町。音楽漬けの日々を送る女子高生・あおい(若山)、亡き両親の代わりに彼女を育てる姉・あかね(吉岡里帆)、あかねのかつての恋人でありギタリストの慎之介(吉沢)、過去から時間を超えてきた18歳の慎之介である“しんの”(吉沢2役)が織り成す不思議な四角関係を描く。
オーディションで役を勝ち取り、初めて声優に挑戦した吉沢。「とにかくちゃんとやらなければ」という強い意識でアフレコに臨んだそう。
「本当にびくびくしていました。普段のお芝居って、表情だったり、姿勢とか体の動かし方とか、全部を使うから。意外と声じゃない部分で伝えていることが多く、こんなに声を意識せずに芝居してるんだなって、この作品をやってすごく思いました。普段の芝居の5倍くらいのテンションでやらなければ、声だけでは伝わらないんだと気づきました」
「難しかった」と繰り返す吉沢だが、長井監督は「めちゃめちゃうまかったですよ」と太鼓判を押す。田中も「本当に初めてなんですか? みたいな感じでしたよ、こっちは(笑)」と続け、吉沢の演技力に絶大な信頼を置いているよう。
キャラクターの心の機微が丁寧に描かれている作品であり、繊細な演技が求められるが、長井監督は細かい演出はせず、キャストに任せる部分が大きかったという。
「どんな風に解釈して演じてくれるんだろうという楽しみがありました。その場その場で、もちろん大きく違うなって時には意見もさせてもらいましたが、それ以外は台本を読んでいただいて、見て、感じたものをそのまま出していただきました」
吉沢が声を担ったのは、31歳の慎之介と、18歳の慎之介=“しんの”の2役。人生に挫折を感じている30代の慎之介と、夢に満ちた高校生のしんの。性格は真逆のため、内面の演じ分けには苦労はあまりなかったというが、声の使い方には苦心したそう。
「単純に声をどうしようかと思いました。同じ人間だから同じ声であることはあるんですけど、2人が言い合うシーンもあったし、どうやって演じ分けたらいいのか。それぞれ異なる声のトーンを意識して、頑張って演じ分けようとしました」
声だけを意識したことで、「自分の声ってこんな風に聞こえるんだな」と新たな気づきもあったそう。「この作品に入る前に、しんのパートと慎之介パートを録音して、聞き比べたりしたんですけど、めちゃめちゃ気持ち悪いんですよね、自分の声って(笑)」
それは実写作品の時にはない違和感だったといい、長井監督と田中も話を聞きながら興味深そうにしていた。
ヒロインのうちの1人、女子高生・あおい役に抜てきされた若山は、子役出身で声優経験があったものの、この出演は大きなチャレンジだったそう。
「収録の中で自分の至らない部分を痛感していたので、最初に自分の決めたこととしてずっと気にかけていたのは、あおいちゃんがこう感じるだろうとか、私だったらこう感じるだろうという部分。それをふくらませてぶつけるというか、前に出していくことを意識していました」
自身が演じたあおいの「感情が大きく動く時」が見どころだといい、「感情移入して感動していただけるところだと思うので、ぜひそこに注目してほしいなと思います」とアピールしていた。
本作で、吉沢と若山は歌唱シーンにも挑戦した。吉沢が劇中で歌うのは、シンガー・ソングライターのあいみょんによる主題歌。その事実を知らないままアフレコを済ませ、主題歌が流れる予告編を観て知ったのだとか。「予告で知ったんですか!?」と驚く長井監督に、吉沢は苦笑して続けた。
「予告で知ったんです(笑)。それまで、あいみょんさんが歌っている主題歌だなんてまったく知らなかったから、それを知っていたらもっと緊張感を持って、もっと頑張っていたかもしれないですけど(笑)」
そんな風に冗談めかしつつも、「まさかの知らされずに歌ったというわけですが、すごく緊張しました」と語る吉沢。慣れない声だけの演技に、歌を歌うという要素も加わり「大変だった」というが、吉沢の歌唱パートはユニークな演出があり見応えのあるものになっている。
本作は、長井監督と田中らによるチームが手がけた「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」『心が叫びたがってるんだ。』に続き、秩父が舞台となっている。学生をメインにすえた2作と異なり、『空の青さを知る人よ』は現実に直面する30代と、夢を抱く10代の対比が色濃く描かれる。長井監督は、こうしたストーリーに決まる以前に「秩父を1回出ていく話を作ろうというのが企画の最初にありました」と背景を明かす。
「その中で、俺も地元から出て東京で働いていますが、この歳になって“地元”ってどういう所だったのかなっていうのをいろいろ考えて、田中さんとか岡田(麿里)さんとか3人ともが、いろいろな境遇を踏まえたうえで、最終的にはやっぱり地元って悪くなかったよねって肯定したい気持ちにどんどんなっていって、こういう話になりました」
「若い頃には地元が出たくて出たくてしょうがなかった場所だったのが、今は地元っていいよねって言っちゃう自分がいる」そんなところから広がっていったという本作。人生のどの段階の人の心にも寄り添うようなストーリーになっている。(編集部・小山美咲)