『ジョーカー』は『ダークナイト』銃乱射事件が起きた映画館では上映されず…遺族が懸念表明
映画『ジョーカー』(10月4日に日米同時公開)は、2012年7月、『ダークナイト ライジング』の上映中に銃乱射事件が起きた米コロラド州オーロラの映画館では上映されないという。The Hollywood Reporter などが報じた。
12人の死者、70人以上のケガ人を出した同事件。事件の凄惨さのみならず、犯人のジェームズ・ホームズがジョーカーにインスパイアされたかのように髪を明るい色に染めており、逮捕時には「ジョーカー」を名乗ったとして(現在ではそのような事実はなかったとされている)、世間を震撼させた。ホームズは終身刑となり、現在も服役中だ。
『ジョーカー』は社会から軽視されてきた貧しい大道芸人のアーサーが“悪のカリスマ”ジョーカーへと変貌していくさまを描いたドラマで、第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝くなど称賛を浴びる一方、リアルな暴力描写が人々にもたらす影響を不安視する声も上がっている。オーロラ銃乱射事件の被害者の家族たち計5名は、『ジョーカー』の公開を前に米ワーナー・ブラザースのCEOに懸念と要望をつづった手紙を提出した。
そこでは「社会に“不当に”扱われている感じた社会的に孤立した人間が引き起こした凶行により、わたしたちの人生は変わってしまいました」とワーナーがジョーカーを主人公に、そのオリジンストーリーを同情的に描いた映画を公開することに賛同しかねていると表明されている。ただ、映画の上映中止を求めているわけではなく、ワーナーがこうした映画を公開することの責任としてアメリカの銃規制に貢献し、銃乱射事件の被害者支援を目的としたファンドに寄付をしてほしいという内容になっている。
これを受けてワーナーは「我々の社会における銃による暴力は重大な問題となっており、被害者とそのご家族に心からお悔やみを申し上げます」とした上で、同社は長年にわたってオーロラ銃乱射事件をはじめといた被害者たちへ寄付を行っており、規制に向けた活動もしているとすぐさま発表。「間違いないようにしておきたいのですが、架空のキャラクターであるジョーカーも、この映画自体も、どんな種類の現実世界での暴力も支持しません。このキャラクターをヒーローとすることは、この映画、フィルムメイカーたち、そしてスタジオの意図するところではありません」と立場を明確にしている。
先日には、主演のホアキン・フェニックスが、The Telegraph のインタビュー中に本作が実際の暴力事件を引き起こす可能性について聞かれると、「なぜ? どうしてそんなことを……? そんなことはない」と言い残して退席してしまい、1時間戻って来なかったことが話題となった。戻ってきたホアキンは、全く予期していない質問だったため、パニックになってしまったと説明していた。
また、オーロラ銃乱射事件の被害者の家族たち全員が懸念を表明しているわけではなく、映画と現実は別物とコメントしている人たちもいる。(編集部・市川遥)