「時効警察」12年ぶり続編が誕生するまで プロデューサーが明かす変化と不変
オダギリジョー主演の人気ドラマシリーズ12年ぶりの続編となる「時効警察はじめました」が間もなく放送される(10月11日スタート、テレビ朝日系・毎週金曜夜11:15~※一部地域を除く)。2006年から2007年にかけて放送された前シリーズ2作に続いてプロデューサーを務める横地郁英が、シリーズが12年を経て変化したこと、変わらず貫いていることについて語った。
本シリーズは、総武警察署の時効管理課に所属する霧山修一朗(オダギリ)が、交通課の三日月(麻生久美子)とコンビを組んで時効になった事件を解決していくミステリー。霧山が毎回ラストに、犯人に真相を口外しない約束として「誰にも言いませんよ」カードを手渡すなど、あくまで“趣味”の捜査とする設定から生まれるシュールな笑いが特徴だ。2006年1月クールに放送された第1作「時効警察」は深夜帯にもかかわらず平均視聴率10.1%を記録。この反響から翌年4月クールに第2作「帰ってきた時効警察」が放送され、前シーズンを上回る12.0%の平均視聴率を記録した。
そもそも「時効になった事件を捜査する」というアイデアが生まれたいきさつについて、横地プロデューサーはこう振り返る。「(シリーズのメイン監督である)三木聡さんと企画を練っていたのが2005年。僕はミステリーものにしたかったんですね。時効寸前になった事件、未解決事件を扱うドラマで僕が好きなドラマがいくつかあったんです。「ケイゾク」(1999)「おみやさん」(2002~2016)とかの話をしていて。その話し合いで、三木さんが『時効』というワードに興味を持ったので、『あ、時効寸前のドラマはあるけど、時効になった事件を扱ったドラマってないですよね』と。それは面白そうだということになったんです」
その続編が12年ぶりに放送されるが、続編の企画はこれまでにも度々浮上していたと言い、三木聡監督、主演のオダギリジョー、ヒロイン役の麻生久美子へのオファーを皮切りに、制作が本決まりになったのは約2年前。12年を経たことへの懸念について尋ねると「タイムシフト視聴率(7日間・168時間内の視聴率)ができたり、動画配信サービスの台頭など、視聴環境や指標も変わってきている」とテレビドラマを取り巻く状況の変化を説明。
その変化をふまえつつ、「三木監督、オダギリさん、麻生さんがやってみたいと言ってくださった中で、また何か面白いことをやれたら12年前に観てくれた人も喜んでくれるだろうし、ご存じない人にも『こんなことをやっていたんだ』」と楽しんでもらえるのではないか。各キャラクターが12年分歳を重ねた感じは出しつつも、シリーズならではの面白さは変わらず出していきたいと思っているんですけど、前作との違いで言うと、ミステリーのディテールがよりしっかりしたものになっていると思います」と自信を見せる。また変わらないこととして、各回の監督、脚本家の間で「いわゆるイイ話に収めるのは違うと思うので『犯人を救って帰ってこない』というスタンスは共通しています。スリッパで頭をたたいてくるぐらいのニュアンスで」という共通認識を持っているという。
新シリーズでは新たなクリエイター陣として、映画『勝手にふるえてろ』の大九明子監督、『愛がなんだ』の今泉力哉監督らが名を連ね、ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズや映画『銀魂』シリーズなどの福田雄一監督が脚本家として参加するのも話題だ。「福田さんはかなりスケジュールが厳しそうで、『自分がやっているのはシュールではなくベタ(な笑い)だから、本当に自分でいいのか』ともおっしゃっていたんですが、三木さんの笑いをものすごくリスペクトされていて『時効警察』フリークだったこともあって、ぜひお願いしたいと説得しました。福田さんの作品も小ネタが多いので、福田ワールドが『時効警察』に溶け込んだらどうなるのか観てみたいという思いもありました」
なお、新シリーズの放送に先駆け初のスペシャルドラマ「時効警察・復活スペシャル」(9月29日、夜9時~11時5分・テレビ朝日系)が放送されるが、もともとはシリーズの第1話として制作が進んでいた。「去年だったでしょうか。初めは第1話として作っていたんです。でも面白くて、脚本の分量も多かったので、これをどうやって短くしようとなった時に、いっそのこと2時間にしたらもっと面白くなるんじゃないかと。ですからSPを作ることが先にあったわけではないんです」
「時効警察・復活スペシャル」ではメインゲストに武田真治を迎え、出向先のアメリカ・FBIから総武署の時効管理課に舞い戻ってきた霧山が三日月と共に、9年前に時効になった「浦島ガソリンスタンド火災事件」の捜査に挑む。脚本・監督は第1シリーズからのメイン監督である三木聡が担当する。(取材・文:編集部 石井百合子)