「ぼくのエリ」原作者の衝撃映画、ヒロインのモデルは英国俳優とネアンデルタール人!
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者として知られるヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの小説に基づく北欧ミステリー『ボーダー 二つの世界』(10月11日公開)。第91回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされるなど高い評価を受けたキャラクター・ビジュアルの意外なモチーフについて、アリ・アッバシ監督が明かした。
本作は、類まれな嗅覚を駆使してスウェーデンの税関に勤めるヒロイン・ティーナ(エヴァ・メランデル)が、1人の男との出会いを経て自身の出生の秘密を探り当てていく物語。醜い容貌にコンプレックスを持ち、心の通わない恋人と暮らしながら孤独を抱えていたティーナは、この奇妙な男ヴォーレに本能的な何かを感じ、離れを宿泊先として提供。ヴォーレ(エーロ・ミロノフ)との距離を縮めていく一方で、赤ん坊にかかわる恐ろしい事件に遭遇する。第71回カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門グランプリを受賞している。
映画の出発点として、アリ監督は「原作を読んだ時に、ティーナの旅路、ティーナが誰であるかということに興味を持って映画を作りたいと思ったので、その部分はそのまま映画に残したいと思いました」という。また、秘密を抱えたティーナというキャラクターについて「内向的で控えめなところがあり、言わばスーパーヒーローなのにその能力をほとんど使っていない人物像であることは残したいと思いました」と意図を説明する。
重要になったのがティーナとヴォーレのビジュアル。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』などのヨーラン・ルンドストルム、『ハリー・ポッターと死の秘宝』やドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのパメラ・ゴールダマーがメイクアップを担当した。
アリ監督いわくメイク作りはてんてこまいだったそうで、「クランクイン準備の後半から作業に入ったこと、トラブルもあって結構ギリギリな感じでしたし、カオスな感じだった」とのこと。しかし、追い詰められていたからこそ決断を早く下す必要があり、それが功を奏したとも。「納得いくルックができるまで大体2週間ぐらい。結構早かったと思います。それを立体的な造形にするのに1か月ぐらいかな。最終的なメイクのテストを行ったのは、撮影に入る1日前ぐらい」
ビジュアルイメージについては、モンスター映画のフランケンシュタインやゾンビなどのヒューマンモンスターをリサーチするところからスタート。アリ監督は「それらのロジックや神話の起源を考え、その結果、たどり着いたのがネアンデルタール人。エディ・マーサン(『シャーロック・ホームズ』『ハッピー・ゴー・ラッキー』などのイギリス人俳優)からもインスパイアを受けています」と意外なモチーフを挙げた。あくまでファンタジーではなく、実在するものがヒントになっていると強調し、「重要だったのは『人間なのか?』と疑うような異質な雰囲気を持つ一方で、クリーチャーではなく人間だと感じさせること。ヨーランとパメラに指示を出すにあたって、そういったバランスが重要でした」と独特な特殊メイクが生まれた裏側に触れた。(編集部・石井百合子)