『ジョーカー』ホアキン・フェニックス、順撮りできずブチ切れていた
映画『ジョーカー』で悪のカリスマへと変貌していく主人公アーサー・フレックを演じたホアキン・フェニックスが、演技を追求するうえで、スケジュールの関係から撮影途中でジョーカーの場面を撮影することに、当初は怒りを感じていたことを明かした。
コメディアンを夢見る孤独な男はいかにしてジョーカーになるのか。本作で、アーサーが抱える行き場のない悲しみと怒りを演じたホアキンには称賛が集まっており、アカデミー賞主演男優賞ノミネートも確実視されている。しかし撮影中は、脚本通りに順撮りができないことにフラストレーションを感じる場面もあったという。
「初めは嫌でしょうがなかったんだ。特に、ジョーカーとしてのシーンを撮影しなければならないと知った時は、非常にがっかりした。トッド(フィリップス監督)に怒りをぶちまけていたからね。今の段階でジョーカーを演じるのは無理だ、そんなことはできない、ここですでにジョーカーをやるなんて意味がない! って騒ぎ立てたよ」
しかし、ジョーカーを演じたことが、結果として大きなプラスに働いた。「初めてジョーカーを演じた時、閃きがあった。今まで演じてきたアーサーは間違いだったってね。キャラクターへの理解度がまったく違う段階に達し、アーサーへのアプローチを変えたんだ。あの時の僕はすごく怒ってたけど、今はとても感謝している。あれがなかったらアーサーへの理解は、中途半端なもので終わったからね」
役へのアプローチが変わった結果、再撮影の必要にも迫られたという。「いくつかの細かい部分が意味をなさなくなってしまったんだ。アーサーのヘアスタイルを変えたし、衣装も少し調整した。もちろん、アーサーの行動にも変化をつけた。今までのやり方が間違ってたと気がついた訳だから、そのまま進む事はできない」というホアキンは、「創造には流動性がなければならない。ただ数をこなすためだけのものじゃないんだ。創作するということは、呼吸をしているということだから」と語る。
これまで数々の名優が演じてきたジョーカー役に惹かれたのも、そこまで追及しなければ到達できない、本作が持つ深みにあったようだ。「映画って往々にして、答えを簡単に出しすぎる時がある。『こんな体験をしたからこのキャラクターはこんな人間になった』みたいなね。でも生きるってことはそんなに浅くて簡単な事じゃないし、人間の心理ってもっともっと複雑だ。何でそんなことをするのか? 人の言動の裏側は理解できないことの方が多いし、無意識に行動に駆られる事だってある。この映画は、表面的な答えは出していない。簡単な答えが出るものなんて、この世の中にないんだからね」(編集部・入倉功一/Koichi Irikura)
映画『ジョーカー』は全国公開中