京都映画祭、バンツマの名作で映画愛あふれるエンディング 活動弁士に大喝采
20日、京都市で開催された「京都国際映画祭2019」内で、日本映画の父とも呼ばれる牧野省三さんが総指揮を務めた傑作活劇映画『雄呂血』(1925)が、活弁付きで上映され、中島貞夫監督が慣習を務める「没後 90年牧野省三の功績を偲ぶ」企画が開催された。81歳で現役の活動弁士として活躍する井上陽一さんが、80分近くにわたり迫力のある語り口調で映画に華を添え、会場は大歓声に包まれた。
この日上映された『雄呂血』は、大正14年に発表されたサイレント映画で、当時23歳だった阪妻(バンツマ)こと阪東妻三郎さんが主演を務めた。正義感の強い主人公の若侍が、己の正しいと信じた行いが誤解され続けた末に感情を爆発させ、人を殺めてしまうラスト27分の大立ち回りは息を飲む美しさ。「活動写真和洋合奏団」の演奏に合わせて、井上さんの凛とした活弁が響き、94年前の感動が現代に蘇る。かつて日本人の心を捉えた映画は、この日ふたたび観客の心を虜にしていた。
映画祭での最後の上映作品でもあり、上映が終了すると客席からは大歓声。「井上!」という声が飛び交う、感動のフィナーレになった。
上映後には中島監督が登壇し、没後90年となる映画の父がいかにして日本の映画文化を作っていったのか、そして、当時の俳優たちがいかにフィルムに全身全霊を込めていたのかを解説。よしもとチャンバラパフォーマーと、京都太秦の東映撮影所で継承されてきた殺陣集団、東映剣会(つるぎかい)が、中島監督演出による殺陣を披露し、チャンバラの楽しさを観客に伝えた。
多彩なジャンルにおける新進クリエイターの発掘、育成を目指すプロジェクト「クリエイターズ・ファクトリー」を進める一方で、新作からサイレント映画まで数多くの映画が上映された京都国際映画祭。映画のみならず、アート展示など各種イベントが催され、よしもと芸人たちが、劇場の中でも外でも「笑い」を武器にお祭りを盛り上げる、唯一無二の映画祭となった。(森田真帆)