大河「麒麟がくる」タイトルの意味は?未来が見えない現代への思い、制作統括明かす
大河ドラマ「麒麟がくる」(1月19日スタート、NHK総合・日曜20時~ほか)の制作統括・落合将が、2020年に戦国ドラマを描く意図と、タイトルの「麒麟」に込めた意味について明かした。
本作は、安土桃山時代の「本能寺の変」で織田信長を討った戦国時代の武将・明智光秀の謎多き生涯を、長谷川博己の主演で描くもの。1991年の大河ドラマ「太平記」を手がけた脚本家・池端俊策が、新旧の史料に当たり、従来のイメージにとらわれない光秀像をオリジナル脚本で書き上げた。大河で光秀を主役に据えるのは、今回が初となる。
落合は、2020年の大河ドラマの担当することになったとき「僕自身は、戦国時代というものが成り立つ以前、時代がどう進んでどう戦国時代になるのか、その最初の卵みたいな時代の揺籃期に興味がありました。ドラマとしてこれまであまりやっていないし、歴史ロマンとしても面白いと思ったんです」と感じたという。「流行りの言葉で言えば、戦国時代の『オリジン』というか、英傑たちが英傑になっていく時代を描くのに、最も描きやすい青年は誰か? 池端さんと相談するなかで明智光秀が浮上してきました」と主人公に光秀を選んだ経緯を語った。
作品タイトルの「麒麟」にはどんな意味があるのかーー。「この言葉を持ってきたのは池端さんです。中国の歴史書『史記』では、王が仁(徳の一つ)のある治世を行い、穏やかな世になったとき、その王のところに現れる霊獣が麒麟なのだそうです」と落合。「今のわたしたちは、昭和、平成、令和と大きな時代の転換期にいて、戦国時代ほどではないにしろ、生きにくさを感じるし、100年後の未来が見えないという意味では、戦国時代と共通している。閉塞した世の中に麒麟が来てほしいと願うことは、視聴者にも届くのではないかと思いました」とタイトルに込めた思いを明かした。
キャストには、光秀役の長谷川のほか、信長役に染谷将太、斎藤道三役に本木雅弘がふんし、木村文乃(光秀の正室・熙子役)、川口春奈(帰蝶役)、門脇麦(駒役)、西村まさ彦(明智光安役)、佐々木蔵之介(のちに秀吉、藤吉郎役)、堺正章(望月東庵役)らが出演。
染谷(信長役)、本木(道三役)らキャスティングについて訊くと、落合は「後世の物語が作りあげた虚飾を一度外して、我々のドラマとして、時代を作る人物像を、新しく形にしていこうと思いました。15歳という信長以前の信長から描き、母親の存在が欠落していて、暗い影を落とすアダルト・チルドレン的要素もある信長像を演じるのに、染谷くんはふさわしいと思いましたし、本木さんも、我々が想像した以上に重厚な道三像を作り上げてくれています。こういう本木さんは初めて見るなと、うれしい驚きがありました」と手応えを感じている様子。
大河ドラマで歴史を描く意義について「日本がどういうふうに出来上がって、今どういう時代にあるのか、揺れ動いている今だからこそ『座標』となるようなエンターテインメントとして、若い人にも観てほしい」と力を込めていた。(取材・文/岸田智)
大河ドラマ「麒麟がくる」は1月19日よりNHK総合、BSプレミアム、BS4Kにて放送(初回拡大75分)