『カイジ』名言の裏に隠れたメッセージ!原作者・福本伸行が明かす
人気漫画「カイジ」シリーズの作者・福本伸行が、この映画のためだけに自ら脚本を書き下ろしたストーリーが展開する『カイジ ファイナルゲーム』(1月10日公開)。物語は、2020年東京オリンピック後、不況に陥った日本を舞台に、藤原竜也演じる主人公・カイジが国中を巻き込む大勝負に打って出る。「今回は、ギャンブルの域を超えた『人間力』が試される」と語る福本。壮絶な戦いのなかで飛び交う名言の裏に隠された渾身のメッセージとは?
『カイジ』といえば、随所に飛び出す決めセリフにしびれまくるファンも多いが、今回は戦う敵も、戦う目的も、戦うスケールも、シリーズ最大と言って過言ではない舞台設定が用意され、さらに熱い言葉が劇中を駆けめぐる。
福本いわく、「ただ金持ちを打ちのめすのではなく、社会の闇やゆがみの根源にカイジが切り込んでいくようなものにしたかった。映画の重要なシーンで『最後の審判~人間秤~』というゲームが出てきますが、『人間力』が試されるという大掛かりなもの。もはやギャンブルの域を超えた戦いが繰り広げられるので、セリフも当然、熱くなる」。
なかでも、お気に入りなのが、「日本がダメになりそうになっても、逃げずに、泥水をすすってがんばればいいじゃないか」(一部抜粋)というカイジのセリフ。
「この価値観こそが日本人の原点だと思うんです。明治維新のときも、戦後の復興や高度成長期のときもそうでしたが、貧しいときは、貧しいなりにがんばって成長してきたという歴史があるじゃないですか。その精神が今も生きていると思います。プラス『本気になれば、巨大な力とも戦うことができるんだ』という夢と希望をカイジに託したかった」
その福本の熱量に、カイジ役の藤原はエンジン全開で見事に応えている。
「この映画は、怒鳴り合ったり、罵り合ったり、感情をぶつけ合う激しいシーンが多い映画。それを振り切ってやれる力のある役者さんじゃないと成立しないのですが、舞台出身の藤原さんは、まさにハマり役。今回、同じく舞台を主戦場にしてきた吉田鋼太郎さんにカイジと対立する敵役で参加していただいたのですが、お二人の掛け合いは、まるでシェイクスピア劇のようですばらしかった。少し大仰(おうぎょう)なことを言っても、説得力があり、人の心を打つシーンにまで持ち上げてくれている力量は、さすがだなと思いましたね」と絶賛した。
本作でシリーズ第3弾となるが、漫画と映画が互いに刺激し合うこともあるかと思いきや、福本は「この2つは全く別物」だとキッパリ言い切る。
「漫画は漫画で違う流れがあるので、影響し合うことはないです。映画の脚本は、あくまでも映像を想定して書いています。スケールがあまりにも違いすぎますからね。ただ、1つだけルールがあるとするなら、人としてのカイジの描き方。彼は仲間を何よりも大切にする男で、裏切られることはあっても、裏切ることは決してしない。ちょっとダメなところもあるけれど、正義感もあり、根っこがすごくいい奴。そこは変わらない。だから、漫画と映画……表現は違えど気がつけばカイジという人間そのものはシンクロしてるかもしれませんね(笑)」
福本のカイジに対するあふれんばかりの愛が最新作で爆発する。(取材・文:坂田正樹)