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「ドラえもん」「ルパン三世」続々立体化 山崎貴監督がビッグタイトルに挑む理由

『ルパン三世 THE FIRST』より
『ルパン三世 THE FIRST』より - (C) モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会

 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』『STAND BY ME ドラえもん』『寄生獣』などビッグタイトルの実写・アニメ化を多く手掛け、ヒットさせてきた山崎貴監督。最新作は、原作コミック誕生から50年以上にわたって愛されている『ルパン三世』のアニメシリーズ初となる3DCG映画『ルパン三世 THE FIRST』(12月6日公開)。本作の公開を前に、作品に込めた思いやその舞台裏、ビッグタイトルの映画化に対するスタンスを語った。

【動画】『ルパン三世 THE FIRST』予告編

 モンキー・パンチ原作の「ルパン三世」は、1971年にテレビアニメシリーズが始まって以来、テレビシリーズ、テレビスペシャル、映画と多彩に展開してきた。コメディータッチからシリアス系までそのテイストもさまざまだが、山崎監督が目指したのは、誰もが楽しめるエンターテインメント。「アクションや謎解き、どんでん返しなど“This is LUPIN(これがルパンだ)”という作品にしたかった」という。大切にしたのはルパンと仲間たちの関係性。「時に相手を裏切りながら、でも友情で結ばれている。追いかける銭形警部を含め、彼らの不思議な仲間感は不可欠ですね」。そんな今作の時代背景は、1960年代後半に設定された。「原作の連載がスタートした時代ですし、ルパンは現在のようなハイテクな世界よりも、どこかロマン漂う時代が似合うと思います。物語に古代文明を絡めるなど、センス・オブ・ワンダーも大切にしました」とこだわりを語る。

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 『ルパン三世 THE FIRST』のストーリーの軸となるのは、財宝の謎が秘められた機械仕掛けの日記帳、ブレッソンダイアリーの争奪戦。ここにたどり着くまでに多くの案が出たという。「シェイクスピアの財宝を探すなど無数のアイデアを話し合い、最終的に古代遺跡を絡めた話になったんです。初期の内容はほぼ残っていません(笑)」と振り返る。さらにピクサーなどハリウッドで採用されている映画の簡易試作版となるストーリーリール(原画を映像化したもの)を作り、細部を調整した。「映像は手描きのスケッチですが、音楽やセリフはすべて入っているので映画を観ている感覚になれる。これを大勢の人に観てもらい、そこで出た意見を参考に3回ほどストーリーリールを作りました。中にはネガティブな意見や鋭い指摘もあり、精神的につらかったです(笑)」と舞台裏を明かした。

山崎貴監督
山崎貴監督

 本作は『ルパン三世』初のフル3DCG作品。山崎監督はビジュアルにあたって、手描きと3DCGの持ち味を組み合わせた。「立体的なアクションなど3DCGの利点を生かしつつ、キャラクターの動きや表情は手描きの“らしさ”を引き継いでいます。モーションキャプチャにすれば作業が軽減され予算も抑えられますが、それだとルパンらしさが出ない。キャラクターはアニメーターの手作業が一番だと思っています」。例えば、ルパンがジャンプしながら服を脱ぎ捨てる“ルパンダイブ”は「3DCGだと生々しくなってしまう」ので残念ながら見送ったという。演出には実写の手法も取り入れた。「最初に声を収録する時、役者さんには実写と同じように演出しました。その声のニュアンスを元にアニメーターたちが繊細なお芝居を付けていく。カメラワークもアニメでは何でも可能になりますが、違和感が出ないよう、基本的には実写で撮影可能な映像をベースにしています」

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 山崎監督と言えば、西岸良平の漫画を実写映画化した『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)が興行収入32.3億円を記録し、後に2本の続編が制作。いずれも45.6億円、34.4億円と第1作を上回るヒットとなり世に広く名を知られることとなった。そのほか、実写映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010)で41億円、3DCGアニメ『STAND BY ME ドラえもん』(2014)で83.8億円、実写映画『寄生獣』前後編(2014)がそれぞれ20.2億円、15億円を記録。今年も3DCGアニメ『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』が8月に公開され、コアなファンを持つビッグタイトルを手掛けてきた(数字は日本映画製作者連盟調べ)。

 着手する作品のチョイスについては「どうしても自分がやりたいもの、依頼され納得できたものなどケースバイケース」だというが、批判されるのを覚悟して作る場合もあるという。「ここ数十年でCG映画が可能になるなど、テクノロジーの進歩で新しい表現や手法が次々に出ています。過去の作品をこれまでと違う表現にしたらどうなるのか、そこに挑戦する気持ちも必要だと思います。その結果、新しい側面が見えてくるかもしれないし、逆に痛い目に遭うかはわかりませんが(笑)。そういう意味で『ルパン三世』は多様性を許容する作品だと感じました」

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 「ものを作る人間はそれに関するリスクを背負う覚悟が必要」と語る山崎監督。ネガティブな声が出るのを恐れて萎縮していては前に進めないというそのスタンスが、数々のビッグタイトルを成功に導いてきたのだと実感させられた。50年もの歴史を受け継ぎながら、これまでにないスタイルで誕生した『ルパン三世 THE FIRST』は、ルパンへの愛情とチャレンジ精神が組み合わさった山崎貴らしい作品といえよう。(取材・文:神武団四郎)

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