ポン・ジュノ監督、ブロックバスターからは縁遠いと謙遜【第4回マカオ国際映画祭】
第4回マカオ国際映画祭の受賞結果が現地時間10日に発表され、本年度の興行的な成功を収めたアジア映画に贈られるアジア・ブロックバスター・フィルム2019を韓国のポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』(2020年1月10日公開)が受賞した。カンヌ国際映画祭で韓国初のパルムドールを受賞した同作は、先ごろ発表になったロサンゼルス映画批評家協会賞で作品賞ほか3冠に輝いたばかりで、快進撃はまだまだ続きそうだ。
授賞式には多忙なポン監督に代わって、プロデューサーのクァク・シネが出席。本年度の同映画祭タレント・アンバサダーの仏女優ジュリエット・ビノシュからトロフィーが手渡され、続いてポン監督のメッセージが流された。ポン監督は受賞を喜びつつ「わたしは大ヒット映画を監督したことはありません。実際、わたしは“ブロックバスター”という言葉とはあまりにも縁遠い」と謙遜。続けて「今回の賞は、“世界中の観客の心にヒットした”賞だと受け止めます」とユーモアを交えてコメントした。
同賞はこれまで、ヨン・サンホ監督『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、ウー・ジン監督『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(2017)、ジョン・M・チュウ監督『クレイジー・リッチ!』(2018)と、いずれも世界的な好成績を収めた作品が受賞している。かつては一部のコアな映画ファンにのみ親しまれていたアジア映画の、ワールドワイドな広がりを実感するかのようだ。
また今年から新設されたニュー・チャイニーズ・シネマ部門の初代最優秀女優賞には、中国映画『ベター・デイズ(英題) / Better Days』のチョウ・ドンユイが輝いた。同作は香港の名優エリック・ツァンの息子であるデレク・ツァンが監督を務め、熾烈を極める中国のお受験戦争の中で繰り広げられる壮絶なイジメ 問題を描いており、10月に公開された中国で大ヒットを記録。ドンユイは今年の映画祭で「アクトレス・イン・フォーカス」として特集上映が組まれていた。まさに“今年の顔”となった。
第4回マカオ国際映画祭の受賞結果は以下の通り。(取材・文:中山治美)
【インターナショナル・コンペティション部門】
■最優秀作品賞:キリル・ミハノフスキー監督 『ギブ・ミー・リバティ(英題) / Give Me Liberty』(アメリカ)
■最優秀監督賞:ファイザル・ボウリファ監督 『リン+ルーシー(原題) / Lynn + Lucy』(イギリス・フランス)
■最優秀女優賞:ロザンヌ・スクリムショウ 『リン+ルーシー(原題) / Lynn + Lucy』(イギリス・フランス)
■最優秀男優賞:サーム・ヘン 『ボイエンシー(原題) / Buoyancy』(オーストラリア)
■最優秀脚本賞:ヘイミッシュ・ベネット 『ベルバード(原題) / Bellbird』(ニュージーランド)
【ニュー・チャイニーズ・シネマ部門】
■最優秀作品賞:グー・シャオガン監督 『春江水暖』(中国) *第20回東京フィルメックス審査員特別賞
■最優秀監督賞:アンソニー・チェン監督 『熱帯雨』(シンガポール ・台湾) *第20回東京フィルメックス上映
■最優秀脚本賞:ジョニー・マー 『トゥ・リブ・トゥ・シング(英題) / To Live to Sing』(中国・フランス)
■最優秀女優賞:チョウ・ドンユイ 『ベター・デイズ(英題) / Better Days』(香港・中国)
■最優秀男優賞:ウ・シャオリャン 『ウィズダム・トゥース(英題) / Wisdom Tooth』(中国)
【その他の賞】
■最優秀短編賞:ジェニー・ワン監督 『ロンリー・エンカウンター(英題) / Lonely Encounter』(香港)
■マカオ観客賞:ロッド・ラスジェン監督 『ボイエンシー(原題) / Buoyancy』(オーストラリア)
■アジア・ブロックバスター・フィルム2019:ポン・ジュノ監督 『パラサイト 半地下の家族』(韓国)
■NETPAC賞(最優秀アジア映画賞):ジョニー・マー 『トゥ・リブ・トゥ・シング(英題) / To Live to Sing』(中国・フランス)
■スピリット・オブ・シネマ名誉賞(功労賞):リー・シャオホン監督