今夜「いだてん」最終回!宮藤官九郎、全てを終えた今
15日に最終回を迎える「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合・日曜20時~ほか)の脚本を手掛けた宮藤官九郎が、執筆を終えた心境を明かした。映画監督、演出家、俳優、ミュージシャンなどマルチの才能を発揮する彼が、大河ドラマでオリンピックを巡る激動の近代史に挑戦。「執筆が決まった当初は『最後まで書き終わらないうちに体を壊したらどうしよう』という怖さもありました。でも、全てを終えた今振り返ると、やっぱりいい経験でしたね。今だからできたと思います」と振り返っている。
本作は、日本人初のオリンピック選手となった金栗四三(かなくり・しそう/中村勘九郎)と、オリンピックを東京に招致した田畑政治(たばた・まさじ/阿部サダヲ)を主人公に、1964年東京オリンピック開催までを紐解く物語。
史実に基づく物語を紡ぐにあたり、「歴史の資料を元にドラマを描くのは、僕にとってチャレンジでした。残されている膨大な資料は、たくさんのヒントが得られたと同時に、足かせにもなった」と苦戦を明かす宮藤。一方で、記録に残っていない部分に関しては独自のアレンジを加えた。登場人物の中には神木隆之介ふんする落語家の弟子・五りんをはじめとする架空のキャラクターも登場するが、宮藤は虚実織り交ぜた物語を以下のように述べている。
「資料はドラマを描くときのヒントであり、材料みたいなものを与えてくれるもの。これとこれを組み合わせたらどうなるだろう? って、自分で考えていく感じです。そのなかに架空の人もいて、絶対に交わらないはずの金栗さんと志ん生(ビートたけし)が間接的につながるという。それは架空の人物を配置したからこそのおもしろさですよね」
脚本家としては、近年はドラマ「ゆとりですがなにか」「監獄のお姫さま」、映画『土竜の唄 香港狂騒曲』『パンク侍、斬られて候』などを手掛けてきた宮藤。来年7月に50代に突入するが、「いだてん」を「今だからできた」と強調する。
「年を取ったらここまで情報処理ができなかったと思うし、逆に若かったらもっと自分を出したくなって、実在の人物よりも自分の頭で考えたことを優先したくなっちゃったかもしれません。そう考えると、この年齢で、この体力で『いだてん』と出会えて良かったなと思います」
一方、宮藤と共に1年を駆け抜けてきたチーフ演出の井上剛は、本作を「まさに現代を生きる私たちと地続きの物語」と評する。最終回を前に「最終回といえばいつもそうですが、終盤のスタッフの疲弊度や差し迫るスケジュールにも頭を悩ませながら(笑)、 それでも“ワンチーム”となって全員が力を出し切ったことで、自信を持ってお届けできる最終回になったと思っています」と視聴者に呼びかけている。
15日放送の最終回「時間よ止まれ」は、60分の拡大版で放送。1964年10月10日、東京オリンピック開会式の出来事が描かれる。(編集部・石井百合子)