『パラサイト』人気の理由 ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホが考察
第72回カンヌ国際映画祭において最高賞のパルムドールを受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホによる来日記者会見が26日、都内で開催。アカデミー賞ノミネートも有力視される本作の人気の理由を、2人が考察した。
カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編【動画】
本作は、全員失業中の貧しい一家が徐々に裕福な家庭に入り込み、寄生していくさまを描く物語。アカデミー賞の前哨戦でも受賞を重ね、先日はゴールデン・グローブ賞の監督賞、脚本賞、外国語映画賞の3部門にノミネートされ大きな話題を集めている。
その熱狂ぶりについて、ポン・ジュノ監督は「全く予想していませんでした。わたしにとっては楽しいアクシデントです」と笑顔。また、「富める者と貧しい者に対する善悪の区別がなく、明確な悪党や善人が出て来ないから、ストーリー展開の予測が難しいという観客の反応をよく耳にしました」と反響を明かしつつ、「悪魔や悪党が登場しないにもかかわらず、終盤におぞましい悲劇が起こること」が本作の魅力であると言及した。
主演のソン・ガンホは、「表面的には貧しい人と裕福な人の葛藤を描いているように見えるかもしれないけど、結局は今の時代、わたしたちがどう生きるべきかを考えさせてくれるところに多くの人が共感しているのだと思う」と見解を示した。
そんな2人は、これまで『殺人の追憶』『グエムル -漢江の怪物-』『スノーピアサー』と3作で組んでおり、本作が4度目のタッグ。気心の知れた、信頼し合える仲だ。ポン・ジュノ監督からシナリオ制作中に本作の話を聞いていたというソン・ガンホは、「4年前、貧しい家族と裕福な家族が出てくる話と聞いて、当然裕福な家族のパク社長を演じるのだと思った」と回顧。というのも「そこそこの年齢になって、その間に自分の品位も高まった」と感じているためで、貧しい家族の父親ギテク役のオファーに「まさか半地下に連れていかれるとは想像もしなかった」と恨み節。ポン・ジュノ監督が「ドウモ、スミマセン」と日本語で謝るも、ソン・ガンホは「次からは大雨が降るとか、階段が出る話には決して出演しない」と拒否の姿勢を見せて笑いを誘った。
ところが、ポン・ジュノ監督が「来年のシナリオをお渡ししようと思っているのですが、そのタイトルが『梅雨時の男』と打ち明けると、ソン・ガンホは一転、『梅雨』というワードは気にも留めずに、『アリガトウゴザイマス』と感謝の言葉をかけて会場の笑いをさらっていた。(取材:錦怜那)
映画『パラサイト 半地下の家族』は2020年1月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開