最速レビュー『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』完璧な結末…J・J・エイブラムスの頭脳に感謝
1977年の1作目ジョージ・ルーカス監督による『スター・ウォーズ/新たなる希望』に始まり42年目合計9本のスカイウォーカー・サーガがついに完結を迎える。日本でも20日に公開されるが、一足先にレビューする。(シネマトゥデイ編集長:下村麻美)
映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』写真ギャラリー
どんな傑作を作っても賛否が分かれ、全員を満足させることができないのがこのシリーズの難しいところ。それを承知で『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』にあえて点数をつけると100点満点。スカイウォーカー・サーガの最後、42年目の完璧な終わり方をした。
その理由の一つ目は、スカイウォーカー・サーガの結末に必要な出来事はすべて回収して物語が終わったことだ。一番大きいのは、レイア姫を演じたキャリー・フィッシャーの死が重なったこともある。ファンにはレイア=キャリー・フィッシャーは同じで、思い入れも大きくなっている。その期待への応え方が本作では見事なまでの完成度で表現される。夫だったハン・ソロ、息子カイロ・レンという大事な人が遠くに行ってしまったレイアの深い悲しみと愛情が物語の流れをドラマチックに変化させるのだ。また、レイアだけではない。旧三部作の愛すべきキャラクターたちの活躍、ルーク・スカイウォーカーをはじめ脇役というには人気者のハン・ソロの盟友ランドの物語まで丁寧にエンディングを迎える。
二つ目は、家族の物語の秀逸さ。はるかかなたの銀河系のファンタジーだけではなく、ごく普通の家族にも起こりえる愛情と憎悪の物語。旧三部作、新三部作から続き、続編となるシークエル・トリロジーまで、全てでつながる家族の物語を『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』だけで完結に描き切っている。親の時代、子供の時代それぞれの光と闇。家族を襲った悲劇をどう乗り越えるのかが物語の核となっていてレイとカイロ・レンそしてレイアの感情の機微がブロックバスター映画とは思えないほどの繊細さで描かれる。
最後にこの物語のテーマが訴えかけてくることの尊さ。出自で自分の人生は決められてしまうのか……という問いかけだ。レイには温かい家庭もなく職業はガラクタ拾い、フィンはもとはファースト・オーダーの脱走兵、カイロ・レンはダークサイドに落ちて祖父のダース・ベイダーの影を追う半人前……と若者たちはみな自分を誇れる状況にはない。しかし、大事なのは生い立ちや、周りの環境や過去に囚われることではなく、今の自分の決断であるということ……そのメッセージは何度も物語の中で訴えかけてくる。
新旧でつながったキャラクター同士の絆の描き方や、広がった物語を丁寧に終息に向けて拾い集めたJ・J・エイブラムスの頭脳は希代の職人監督として天才的だと改めて感じた。この偉業は彼しかできなかっただろう。
スカイウォーカー・サーガの最後に思うのは、スター・ウォーズのオリジンと共に時代を過ごせたことと、その最後を見届けられたことへの喜び。そしてその締めくくりを完璧に終わらせたJ・J・エイブラムス監督の頭脳に感謝。