井上芳雄、ヒロアカの魅力語る!劇場版で敵の声優に
「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)で連載中の人気漫画を原作にしたアニメの劇場版最新作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』(公開中)で、主人公の前に立ちはだかる最凶の敵(ヴィラン)・ナインの声優を務めた井上芳雄が、役づくりの苦労や本作の魅力について語った。
【動画】『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』予告編
総人口のおよそ8割が個性と呼ばれる超常能力を持つ世界を舞台に、ヒーローを目指す高校生たちが仲間と共に強大な敵に立ち向かっていく姿を描く物語。ゲスト声優のオファーには驚いたと明かす井上は、主戦場のミュージカル界では演じることが珍しい悪役への挑戦となった。
井上演じるナインは、9つもの個性を持つことができるミステリアスなキャラクターであり、圧倒的な強さで主人公たちを翻弄してく。この物語の核ともいうべき、重要なキャラクターだ。
「自分の理想の世界を作ろうという意志の強さがあって、作中ではっきり描かれているわけではありませんが、そう思うに至った経緯があるのだと思わせる。悪の方ではあるけれど、想いの強いキャラクターだと思いました」
色気のある低音で魅力的な悪役を作り上げた井上。だが、声優としての演技には不安があり、坂本真綾や上白石萌音ら同じく幅広いジャンルで活躍する仲間に相談するなど、リサーチしながら準備を重ねたそう。過去の声優経験も糧になっている。
「声優として出演した『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(2017)で自分なりに芝居をして、完成した映画を観た時に、もっと抑揚をつけてもいいのかなと思ったりもしたんです。観た人の感想を聞くと、いわゆるアニメのセリフと違うからそれが良いって言ってくださる人もいれば、やっぱり少し違和感があるというどっちの意見もあり、自分では答えは全然出ていません」
井上は「また声優のチャンスをもらえるかはわからない」と苦笑しながらも、誠実な姿勢で可能性に向き合い続けている。
「そのジャンルごと作法があると思っているのですが、例えばミュージカルでミュージカルっぽい芝居を勝手にやっちゃう時があって『そんなのしなくていいのに』と言われたりする。きっと声優さんの中でもいろんなやり方、流儀があるのでしょう。その作品のその役の演技の真実がどこにあるかは毎回すごく難しくて答えは出ませんが、僕は声優の経験もあまりないので教えてもらいながら、これと決めつけずに可能性を探りたいなと思っています」
今作のナイン役では「僕史上一番スケールの大きい戦いをした」というアニメならではの壮大なアクションシーンも大きな見どころ。
「僕普段はまったく戦わないんですよ。戦わずに生きていくというか(笑)。怒ったり声を荒げたりすることはほとんどないです。こんな規模の戦いは、舞台上ではなかなかないですよ。想像を絶する戦いをさせていただき、こんな声は出したことないという声を出させてもらいました(笑)。自分でもこんな声も出るんだと驚いたくらい新しい経験でしたね」
絶大な人気を誇る『ヒロアカ』の世界観については、「フィクションではあるけれども、いまの世の中をそのまま違うかたちで描いていて、足りないものを気づかせてくれる」と強く惹かれたという。
「すごくリアルな現実をそのまま描いて何かを伝えるという方法ではなくて、架空の設定やキャラクターたちがたくさん出てくる中で、どうやってみんなと一緒に生きてくか、この社会を生き抜いてくかということについて、すごくヒントになるような話だと思います」(編集部・小山美咲)