高畑充希、前に進む原動力は「自分に飽きること」
舞台、テレビドラマ、映画とさまざまなジャンルで活躍する女優・高畑充希。彼女の魅力と言えば、可愛らしいルックスと緩急自在な演技、さらにはミュージカルで鍛えた歌とダンス……と枚挙にいとまがないが、そんな高畑の個性が詰まった映画『ヲタクに恋は難しい』が7日に公開された。オファーを受けたとき「どんな映画になるのか全貌がまったく見えなくてワクワクした」と語った高畑。そこには彼女独特の“癖(へき)”があるようだ。
本作で高畑が演じるのは、ボーイズラブをこよなく愛する腐女子だが、ヲタバレを恐れるあまり、鉄壁のガードで趣味をひた隠しする26歳のOL・桃瀬成海。人気WEB漫画の実写映画化だが、高畑は「原作を読んですごく面白かったのですが、(メガホンを取る)福田雄一監督から『ミュージカル映画にしたい』と聞いて、『この原作をどうやってミュージカルに?』とまったく全貌が見えなかったんです」と笑う。
普通、イメージがまったく湧かない作品に参加することには躊躇しそうだが、高畑は「だから参加したいと思ったんです」とあっけらかん。続けて「わたしはこれまでも、全然先が見えないような作品を受けてしまう癖があるので……。逆に最初から明確にゴールが見えているよりも、ワクワクするんです」とやりがいを感じるそう。
“ミュージカル映画”という触れ込みの作品だが、実際現場に入っても「どういう作品になるのか見えなさ過ぎて、さすがに途中不安になりました。福田監督に聞いても『俺もわからなくて不安だ』って仰っていて」と苦笑いを浮かべていたが「考えてもしょうがないので、ただひたすらダンスの振りと歌を覚える日々でした」と撮影を振り返る。
できあがった作品について「歌とダンスとコントとラブストーリーと……エンタメ満載。映画というよりは、シーンごとを楽しむ、ニュージャンルの作品に仕上がっています」と自信をのぞかせる。
数多くのミュージカルの舞台を踏んできた高畑。劇中、歌にダンスにパワフルかつ華麗な姿を存分に披露しているが、「実は、これまであまり踊る役をやってこなかったので、正直ダンスをちゃんと習ったことがなかったんです」と意外な発言。本作で披露するダンスはかなり難易度が高かったようで、斎藤工ふんする樺倉太郎と踊るダンスは「ものすごく難しくてテンポもとりづらいので、相当練習しました」と苦労もどこか楽しそうに語る。
映画やドラマの主演も数多く務め、実力派女優としての地位を確立しているように感じられるが、今年5月から帝国劇場で上演されるミュージカル「ミス・サイゴン」では、オーディションを受けて主人公のキム役を勝ち取った。「いつも環境には大満足なのですが、どうしても自分自身に飽きてしまうんです。もう癖ですね」とはにかむ。
とにかく“過去に浸る”ことがないという。「昨年末に連ドラ(『同期のサクラ』)をやっていて、いろいろなところでその話をしていただくのですが、すごく嬉しいなと感じつつも、自分のなかでは思い出フォルダに入っている感覚。もっとしっかりふり返っていかなければいけないのですが、どうしても新しいことや、ものへの好奇心が勝ってしまって……」
現在、「ミス・サイゴン」の舞台稽古のためにボイストレーニングをしているという高畑。「ダンスもそうだったのですが、歌もちゃんとボイトレをしたことなかったので、新鮮なことだらけです。声って体の仕組みと直結していて、全部理論的に説明ができる。いままでスキルゼロで、感覚で歌っていたので、どんな新しい声を学べるのか、とても楽しみです」としみじみ。これまでも高畑の歌は高い評価を受け、多くの人の心を揺さぶるものだっただけに「スキルゼロだった」という発言には驚きを覚える。
2020年も『ヲタクに恋は難しい』をはじめ、ミュージカルなど前に進み続ける高畑の“癖”が存分に発揮されそうだ。「2019年で結構いろいろなことが完結した感じがあってホッとしているんです。20代で全力疾走がいったん終わった感じ」と総括すると「今年は30代が見えてきて。結婚している役や、子どもがいる役など新たな役柄も増えてきそうな時期になって、さらにワクワク感が増しています」と期待をあおる発言。さらにフレッシュでいきいきとした高畑の活躍が楽しみだ。(取材・文・撮影:磯部正和)