『ミッドサマー』に日本映画の影響!アリ・アスター監督が熱弁
ホラー映画『へレディタリー/継承』で脚光を浴びたアリ・アスター監督が初来日を果たし、30日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた映画『ミッドサマー』(2月21日公開)の先行上映会に出席。新作に日本映画からの影響があったことを明かした。この日は、映画コメンテーターのLiLiCoが司会を務めた。
『ヘレディタリー』で衝撃デビュー!アリ・アスター監督が初来日!【画像】
『ミッドサマー』は、スウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”に訪れた大学生の男女が、想像を絶する悪夢に遭遇するさまを描くスリラー。今回が初来日のアスター監督は、大勢の観客で埋まった場内を見渡し「今日はお越しいただきありがとうございます。温かい歓迎もありがとうございます。僕は日本映画が大好き。今回は初来日なので、ワクワクしています。この作品を皆さんにお届け出来ることをうれしく思います」と笑顔であいさつ。
映画の舞台となったスウェーデン出身のLiLiCoは、アスター監督に向かって「スウェーデン人として一つ感想を言わせていただいていいですか?」と切り出すと、夏至のスウェーデンでトラウマ級の出来事が展開する映画に「よくも私たちが誇る素晴らしい夏至祭を、ここまでとんでもないものにしましたね。もう夏至の季節には帰れません」とクレーム。これにはアスター監督も「ごめんなさい」と神妙な面持ちで返答し、会場の笑いを誘った。
本作は、木々や山に囲まれ、日差しがふり注ぐ自然豊かなロケーションの中で、悪夢のような物語が展開するというコントラストが印象的となっている。劇中の舞台は人里離れたスウェーデンの奥地だが、撮影自体はハンガリーのブダペスト郊外で行われた。その理由について、アスター監督は「スウェーデンだと製作費が高くなってしまうからです。というのも、今回は舞台となる村を一から作っていきました。それはハンガリーだからこそ出来たこと。我々の製作費では、スウェーデンでやろうとしても、家が一軒くらいしか建てられないですからね」と説明。さらに労働基準法によってスウェーデンでは長時間の撮影ができないこともあったようで、LiLiCoも「スウェーデン人は働かないんですよ」とジョークを交えて反応する。
さらにアスター監督は、「小さな頃から日本映画を観て育っていたんです。昔の作品でいうと『雨月物語』(溝口健二監督)、『藪の中の黒猫』(新藤兼人監督)、『鬼婆』(新藤兼人監督)、『怪談』(小林正樹監督)、『愛のコリーダ』(大島渚監督)……ほかにも色々とタイトルは言えますよ」と往年の日本映画について言及。「特にこの作品の準備期間に一番名前が出たのが、今村昌平監督の『楢山節考』『神々の深き欲望』といった作品です。これらの作品のことを話していました」と日本映画からの影響を明かすと、「もちろん現代に活躍する監督も好きですよ。黒沢清監督、園子温監督も大好きです。僕が反応する作品というのは、ある種のムードがあったり、感触があるものなんです。日本のホラーにはそういう要素があるし、どこか儚さやミステリーのような感触を抱く。これってなかなか他の国のホラー映画では、失われているものじゃないかなと思っています」と熱弁をふるった。(取材・文:壬生智裕)