細田守監督注目のアカデミー賞候補作 『レ・ミゼラブル』監督と対面
カンヌ国際映画祭で審査員賞に輝いたフランス映画『レ・ミゼラブル』(2月28日公開)のラジ・リ監督が17日、都内で行われた同作のプレミア試写会に来場し、以前から本作に注目していたというアニメーション監督の細田守監督と対面した。この日は“市長”役の俳優スティーヴ・ティアンチューも来場した。
ヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台として知られ、現在は犯罪多発地域として知られるパリ郊外の街モンフェルメイユを舞台にした本作は、少年たちが起こした小さな事件が、やがて思いがけない展開を見せるさまを描く衝撃作。ラジ監督は、本作が長編監督デビュー作ながら、カンヌをはじめ世界各国で数々の賞を受賞。先ごろ行われた第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にもノミネートされ、フランスでは動員200万人を突破する大ヒットを記録した。
大勢の観客を前にしたラジ監督は「皆さんこんばんは。ここにいられることがうれしいですし、この長編作品を観ていただけるということを誇りに思っています」とあいさつ。日本に来るのは2度目とのことで、「東京に来られるなんて信じられません。ここに来るのは夢でしたから」と感激した様子。
一方の細田監督は、昨年のカンヌ国際映画祭で上映されたことを聞いた時から本作のことが気になっていたという。「釜山国際映画祭で上映されることになったんですけど、全然チケットがとれなかったんですよ。それで上映当日の朝に映画館でキャンセルが出るかもと思って待っていたんですが、全然出なくて。それで日本に帰ってきてから(配給の)東北新社さんに見せてもらったらこれが本当に素晴らしい作品だったんですよね……」とその思いを切々と語る。
その言葉に「そんな風に言われて光栄です」と笑顔を見せたラジ監督は、「本当に細田監督の隣で話すことが出来てうれしく思います。実は控え室でたくさん話したんだけど、子ども時代はテレビアニメと共に育ったので、細田監督の隣に立ててうれしく思います」と続けた。
アカデミー賞ノミネートに至るまでの道のりついて、ラジ監督は「本当にラッキーだったと思います。カンヌでも審査員賞をとりましたし、ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされました。でも僕の最初の長編がオスカーにノミネートされるということは、世界中のいろんな人に観てもらえるチャンスがあるということ」と振り返りながら、「いろいろな国で上映されましたが、皆さんまるで自分たちの問題であるかのように認識してくれた。それはきっと普遍的なテーマだったからだと思います」とその反響に触れる。
昨年『未来のミライ』がアカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされた細田監督も、「ゴールデン・グローブ賞はアメリカの飲み会みたいな授賞式でしたが、アカデミー賞は矢継ぎ早に大忙しでした。でもそれでいて案外リラックスしていて、すてきで光栄な場でしたね」と述懐。そして本作について、「今回のアカデミー賞って、作品賞のノミネート作品も含めていい作品ばかり。国際長編映画部門もいい作品ばかりで充実していましたね。その中の一本が間違いなく『レ・ミゼラブル』だったなと思います」と称賛していた。(取材・文:壬生智裕)