岩井俊二監督、『Red』三島有紀子監督の演出方法を絶賛
映画『Red』(公開中)の特別トークイベントが26日、新宿バルト9で行われ、メガホンを取った三島有紀子監督と『ラストレター』などの岩井俊二監督が登壇。それぞれが、映画作りへのこだわりを語り合った。
岩井俊二、三島有紀子の“キス音”へのこだわりを賞賛!【動画】
『Red』は、直木賞作家・島本理生の賛否を巻き起こした長編小説を映画化した作品。誰もがうらやむ生活を送っていた人妻・村主塔子(夏帆)が、かつての恋人で建築家の鞍田秋彦(妻夫木聡)と10年ぶりに再会したことから、運命が思いも寄らない方向に動き出すさまを描き出す。
三島監督は、岩井監督との出会いについて「以前NHKでディレクターをやっていたとき、『ソリトン』という番組に岩井さんが出られた際に、助監督を買って出たんです。それをきっかけに『毛ぼうし』というショートフィルムを岩井さんが撮られると聞いて、またメイキングをやらせてくれないかとお願いしたんです」といきさつを述べる。そのメイキングを撮っているとき、岩井監督が現場を楽しみながら映画を撮っている姿に、三島監督は感銘を受けたという。
一方の岩井監督は、NHKを辞めてフリーの映画監督になった三島監督に対して、どんな心境なのかを問うと、三島監督は「お給料も働く環境も良いと思うのですが、一番自分にとって好きなものは映画なんです。現場で岩井さんの姿を見て、やっぱり映画の現場っていいなと思ったんです」とフリーになった理由として、岩井監督に大きな影響を受けたことを明かす。
『Red』を鑑賞した岩井監督は「すごいなと思いました」と感想を述べると、「夏帆ちゃん演じる塔子さんは、全部失ってしまうのに行ってしまう。人が何かを選ぶとき、何もかもかなぐり捨てるときがあるんだなと感じました」とキャラクターの描き方に力強さを感じたという。
さらに、三島監督の魅力を聞かれた岩井監督は「役者が現場に持ち込んでくるものを大切にしているのかなと思いました。俳優というのは、台本を受け取って撮影までの間に何かしら考えてくるのですが、現場でそれを活かせないようにがんじがらめにしてしまうことがあります。そうすると役者さんの表情から光が消えてしまう。でも三島監督はずっと、役者の光をつけっぱなしでいるように感じるんです」と回答。三島監督も「環境づくりは一番大切にしています。現場に入ったら、役者が何かを感じてもらえるような準備はしています」と語っていた。
その後も、映像や音へのこだわりなど、映画監督として大切にしていることなどを語り合った三島監督と岩井監督。最後は観客と共に記念撮影をするなど、ファンを楽しませていた。(磯部正和)