堤真一&石田ゆり子、映画初共演 堤幸彦が雫井脩介のサスペンス小説映画化
俳優の堤真一と女優の石田ゆり子が、「クローズド・ノート」「検察側の罪人」で知られる雫井脩介のサスペンス小説を映画化した『望み』で、初の映画共演を果たすことが明らかになった。『トリック』シリーズの堤幸彦監督がメガホンを取る本作で、堤は主人公の一級建築士、石田は堤ふんする主人公の妻を演じる。脚本は、『サマーウォーズ』などの奥寺佐渡子が執筆。撮影は今年1月から約30日かけて東京都、埼玉県ほか関東近郊で行われており、今秋全国公開を予定している。
累計発行部数15万部を超える原作「望み」(角川文庫刊)は、少年事件によって崩壊していく家族の姿をつづった作品。連絡が途絶えた息子の行方を巡り、事件の犯人であっても生きていてほしいと望む母親と、息子の無実を信じる父親の交錯していく思いを描き出す。原作を読んで映画化を熱望したという堤監督は、「誰もがイメージできる幸せな家族像」にこだわりキャスティングを行い、およそ4年かけて撮影に臨んだ。
主演の堤は、映画初共演となる石田について「いずれご一緒したいと思っていました。いつも現場の空気を和ませてくれる素敵な方で、今回、一緒に家族を演じることができ、とても嬉しかったです」とコメント。堤監督とも、今回が初タッグとなり「毎日現場に入ると監督が、その日の撮影イメージについて丁寧に説明してくださいました。芝居を見てから、シーンのカット割りを決めていくという、現場主義の監督ですね」と振り返っている。
堤との共演に、石田は「堤真一さんとは、いつかご一緒したいと思っていたのでご一緒できて幸せでした。家族の物語なので、率先してみんなをまとめてくださったり、楽しい話をして、場を和ませてくださったりとてもありがたかったです」と心境を吐露。堤監督とは、『悼む人』(2014)以来のタッグとなり「撮影はとても早いし、無駄なことを一切おっしゃらないので役者としてはとても緊張感があります。今回は私たち俳優の気持ちを汲んで、ほぼ順撮りにして下さりそのことが本当にありがたかったです」と語っている。
堤監督は、「堤真一さんとは初めてですが、映画『クライマーズ・ハイ』(2008)やいくつかの舞台、映画、ドラマを拝見させていただいてお手合わせしたいと考えていました。また石田ゆり子さんとは『悼む人』以来6年ぶりとなりますが、お二人とも苦悩する父と母を見事に演じきってくださいました」と二人の演技を評価している。堤、石田、堤監督、原作者である雫井のコメント全文は以下の通り。(編集部・倉本拓弥)
堤真一(石川一登役)
堤幸彦監督とは初めてのお仕事でしたが、毎日現場に入ると監督が、その日の撮影イメージについて丁寧に説明してくださいました。芝居を見てから、シーンのカット割りを決めていくという、現場主義の監督ですね。脚本を初めて読んだときは、難しい作品だと感じました。家族をテーマにしたサスペンスであり、ただの家庭ドラマではない。自分の子供がまだ小さいからか、中高生の子を持つ親の気持ちやその年頃特有の不安定さというのが掴みづらくて、最初はできるだろうかと不安もありました。でも、実際撮影に入ってみると、その中高生の子供たちが自分の子供として、とても愛おしく思えたんです。監督が順撮りしてくださったお陰なのですが、家族に一体感が生まれて、無理することなく芝居ができました。石田ゆり子さんとは初共演でしたが、いずれご一緒したいと思って いました。いつも現場の空気を和ませてくれる素敵な方で、今回、一緒に家族を演じることができ、とても嬉しかったです。
石田ゆり子(石川貴代美役)
堤幸彦監督とは『悼む人』以来です。撮影はとても早いし、無駄なことを一切おっしゃらないので役者としてはとても緊張感があります。今回は私たち俳優の気持ちを汲んで、ほぼ順撮りにして下さりそのことが本当にありがたかったです。奥寺佐渡子さんの脚本は、辛い中にも透明感というか、優しい光のようなものを感じる素晴らしいものでした。本当に辛い物語なのですが、でもきっと目に見えない大切なことが沢山映っている映画になるのではないかと思っています。堤真一さんとは、いつかご一緒したいと思っていたのでご一緒できて幸せでした。家族の物語なので、率先してみんなをまとめてくださったり、楽しい話をして、場を和ませてくださったりとてもあ りがたかったです。私の役は、息子が加害者であろうと被害者であろうと、とにかく命だけはあってほしいと願い続ける母親の役なのですがその点においては一切の異論なく彼女の気持ちがわかります。「望みはある」と信じ続ける彼女を演じながら私はいつも、祈るような気持ちでいました。
堤幸彦(監督)
息子が事件の被害者となるか加害者となるか、どちらの結末を迎えても惨憺たる結果になるこの物語はミステリーであるだけでなく、設定や行動のディティール、父と母の葛藤とその心理描写の緻密さに圧倒されました。社会的にも経済的にも成功した主人公が、息子の失踪をきっかけにその「家族」が壊されていく。我が身に明日起きても不思議ではない。そのスリルと感情の揺れをストレートに役者の芝居で描きたいと考えました。堤真一さんとは初めてですが、映画『クライマーズ・ハイ』(2008)やいくつかの舞台、映画、ドラマを拝見させていただいてお手合わせしたいと考えていました。また石田ゆり子さんとは『悼む人』以来6年ぶりとなりますが、お二人とも苦悩する父と母を見事に演じきってくださいました。
雫井脩介(原作者)
「望み」は、父と母の心理描写を軸にして紡いだ作品であり、その心理描写が使えない映像というジャンルでこの物語を活かすことは難しいのではと思っていました。しかし、奥寺佐渡子さんから素晴らしい脚本が上がったことでその不安は消え、シリアスな社会派ドラマを含めた多くの作品を手がけてきた堤幸彦監督が、これをどのようにスクリーンに映し出してくれるかという楽しみが一気にふくらみました。堤真一さんと石田ゆり子さんはその安定感でもって、よき父、よき母にしっくり収まります。それゆえ、事件によって平穏な日常が壊れていく様も際立ち、観る者に強く訴えかけてくることだろうと思います。