石橋蓮司、18年ぶり主演作は「生前葬的な雰囲気」
俳優の石橋蓮司が18年ぶりに主演を務めた映画『一度も撃ってません』(4月24日公開)の完成報告会が9日、都内で行われ、撮影について「生前葬的な雰囲気でやらせてもらいましたよ」と茶目っ気たっぷりに語った。報告会には、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり、佐藤浩市、江口洋介、妻夫木聡、新崎人生、井上真央、渋川清彦、前田亜季、小野武彦、阪本順治監督も出席した。
児童劇団から俳優としてキャリアを積み、近年では『アウトレイジ』『孤狼の血』などに出演し、名バイプレーヤーとして活躍する石橋。『弘兼憲史シネマ劇場「黄昏流星群」星のレストラン』(2001)以来18年ぶりに主演を務めた本作は、伝説の殺し屋と噂されるが、その実は落ち目の作家である市川進(石橋)が、本物のヒットマンに命を奪われる騒動を描いたハードボイルドコメディー。
最初のあいさつから、佐藤が「阪本監督から『石橋蓮司最後の主演作なので出てくれ』って言われたんですよ」とおどけると、阪本監督は慌てて「そんなこと言いましたっけ? (最後)かもしれないとは言ったかも」と発言し、笑いを誘う。
石橋も「とてつもなく豪華なメンバーがたくさん出ている」と脇を固める俳優陣に驚きの様子。「どうやってこの人たちを説得したんだろうと疑問に思っていたのですが、浩市が言うように『石橋蓮司さんの遺作になるかもしれない』と言って集めたんだな」と佐藤の言葉に乗っかっていた。
その石橋と、『大鹿村騒動記』『人類資金』『半世界』など度々現場を共にしてきた阪本監督は「ぼんやり蓮司さん主演でやりたいと思っていたのですが、そこにとどめを刺したのが桃井さんだったんです」と秘話を語る。桃井は「別に遺作にしたいと思ったわけではないですよ」と前置きし、「原田芳雄さんの最後の映画(『大鹿村騒動記』)を阪本監督が自力で撮ってくれたのは、日本映画界で一番いい話だと思っているんです。でも残念なのは、芳雄さんは病気になられていたので、蓮司さんは余力のある元気な時に撮ってほしかったんです」と故・原田芳雄の作品を挙げつつ、心境を明かした。
続けて桃井は「わたしが初めて映画に出たとき、蓮司さんが主演でした。蓮司さんの背中を見て育ったらこんな女優になってしまいました」とおどけつつ、「蓮司さんと共演した俳優は、どれだけしゃれた方か知っている」と絶賛。大楠も「二枚目の資質を持っている方、今回の役はとても素敵な二枚目でした」と追随する。
さらに、岸部も「途中から俳優の世界に入ってきた僕からすると蓮司さんは憧れの人。ずっと怖い方だと思っていて、親しく話せるようになったのは最近。でも話すと意外と楽しくとてもリズムの良い方。音楽をやってもいいと思う」と称すると、妻夫木や井上、前田ら若い世代も、石橋の現場での存在感や佇まいに魅了されたと口を揃えた。
共演者から大絶賛の石橋。「主演と言ってもまったく大事にしてくれない。朝は一番早いし、終わるのも最後。撮影中はそんなに飲みにも行けなかたっし、ちっともいいことがない。二度とやりたくないですよ」と愚痴をこぼすも、「僕は昔のB級映画のノリで、ひっそりと撮影してひっそりと上映し、ひっそりと評価を受けて終わることができればいいかなと思っていたのですが、ものすごい豪華メンバーが集まってくれた。しかもみんなが面白がって本気でやってくれました。どの登場人物をとっても一本の映画になるぐらい」と共演者の熱量に感謝していた。(磯部正和)