「麒麟がくる」帰蝶役・川口春奈、初大河で大役担う覚悟

　現在放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」（NHK総合・毎週日曜20時～ほか）。戦国武将・明智光秀（長谷川博己）の謎に包まれた人生をつづる本作で、美濃の守護代・斎藤道三（本木雅弘）の娘・帰蝶（きちょう）を演じている川口春奈。光秀とは親戚筋に当たり、のちに光秀の主君となる織田信長（染谷将太）に嫁ぐ重要なポジションを担うが、川口が考える帰蝶像とは……？

　初の大河ドラマにして時代劇初挑戦となった川口。「クランクインする前から長谷川さんは温かい言葉をかけてくださり、気にかけていただいています。いつも穏やかに現場にいられるので、すごく安心感があるんです」と長谷川の存在が大きな心のよりどころになっていることを明かす。

　美濃を統治する守護大名・土岐頼純（矢野聖人）の妻として登場した帰蝶。第二回では、父・道三が夫を毒殺するという衝撃的な出来事に直面したが、劇中では帰蝶が動揺するような場面は描かれていない。そのシーンについて川口は「すごい時代ですよね……」と苦笑いを浮かべつつ「一方で、こういうことが当たり前の時代なのかなという思いもありました」と客観的な目を持つ。

　道三を演じる本木については「あの毒殺のシーンは、一視聴者として圧倒されました」と語ると「現場でも、ものすごく威圧感とオーラがあります。対峙すると何かを見透かされているような、自分が（道三）に動かされているような感じになります。本木さんはすごいです」と俳優・本木雅弘の胆力に圧倒された様子だ。

　そんな“まむし”の娘として「激動の時代を生き抜いた女性」ということが、川口が帰蝶を形作るうえで一つのキーワードになっている。「スタッフの方にも芯の強さがあり軸がぶれない賢い女性を意識してほしいと言われたのですが、その部分は常に心の中で持っているようにしています」と帰蝶を演じるポイントを語る。

　その一方で、女性的なかわいらしい一面も大切にしているという。それは、例えば光秀への淡い恋心。光秀とは幼少期から気心が知れている仲で、光秀は道三からも帰蝶の気持ちを察するように命じられるなど、二人の関係は帰蝶のキャラクターを表すうえで重要なポイントとなる。

　「政略結婚として織田信長に嫁ぐということは、この時代ならば仕方のないことで断るという選択肢はない。ある意味で宿命であることはわかっているのですが、光秀さんへのやり切れない思いとの葛藤は帰蝶の一つの特徴です。覚悟を決めるまでのシーンなどで見せる切なさも、彼女の特徴だと思っています」

　さらに帰蝶と同じく光秀に思いを寄せる駒（門脇麦）とのガールズトーク的なシーンもお気に入りのようだ。「台本では決してライバル心を抱く存在ではなく、互いに思いが報われないという同士のように描かれています。駒ちゃんといるときだけは、帰蝶も自分の素を出すことができる。普段見られない表情も見られるシーンだと思います」

　また信長に嫁いだことから、帰蝶の人生は大きく変わる。「とにかく信長のキャラクターが濃くて面白い」と川口は目を輝かせると「染谷さんがとてもコミカルかつダイナミックに信長を演じていて、天真爛漫な部分と、潔く物事を決めていく力強さなど、いろいろな顔を見せてくれる。すごく刺激的なお芝居をされています」と視聴者の期待を煽る。

　「間違いなく自分をステップアップさせてくれる役」と帰蝶役に手ごたえを感じている様子の川口。初めてのことが続き「今は何もかもがチャレンジで、一生懸命やるのみ」と語っていたが、撮影が終わったとき、どんなことが自身の筋肉になっているのか、とても楽しみだという。「全身全霊で最後まで帰蝶を全うしたい」と覚悟を語った。（取材・文：磯部正和）