秦基博×白鳥玉季×飯塚健監督『ステップ』主題歌MV撮影の裏側
山田孝之主演の映画『ステップ』(4月3日公開)でシンガーソングライターの秦基博が手掛けた主題歌「在る」のミュージックビデオが、同作のメガホンをとった飯塚健監督によって制作された。2月23日、その撮影が都内で行われ、秦をはじめ飯塚監督、映画にも出演している人気子役の白鳥玉季が取材に応じた。
映画『ステップ』は、重松清の同名小説を原作に、妻を亡くした30歳の健一(山田孝之)が、男手一つで幼い娘・美紀を育てる10年の軌跡を描く物語。2歳から12歳の美紀に3人の子役がキャスティングされ、白鳥は6歳から8歳までを演じた。秦が書き下ろした主題歌「在る」のMVの撮影は、映画の重要なキービジュアルにもなっている坂道、陸橋、その下に電車が通っている十字路で行われ、陸橋ではクレーンで真上から秦を捉える大掛かりな撮影もあった。
映画に続いてMVの監督を担当した飯塚は、MVの撮影をこの場所で行った理由ついて「あの道は、映画において常に美紀の成長に合わせて俯瞰で撮っていた場所だったので、他に思い浮かばなかった」という。「映画のキーになるような場所に秦さんが立って歌っている姿があることもうれしかったですし、不思議な感覚でした。主題歌と映画がうまくリンクしたのではないか」と続ける一方で、秦も「「実際にこの場所に来られて、そこで自分が歌っているというのは、不思議な気持ちでしたが、とても嬉しかった」と映画の舞台に立った印象を語る。
主題歌を書き下ろすにあたり映画を鑑賞し「誰かがいなくなってしまうこと、だけど存在するということ。それは自分自身も考えることがたくさんありましたし、たくさんの人とのつながりのなかで自分がこうして今ここに生きている、その先があるということを、強く感じた」という秦。楽曲づくりについては「エンドロールにどんな曲が流れたらいいのかとイメージし、ギターのフレーズや歌い出しの歌詞のいくつかが出てきて。そこから完成に至るまで、映画からいただいたインスピレーションをもとに楽曲が生まれていきました」と制作過程を振り返る。
MVの撮影で飯塚監督がこだわったことの一つが、歌う秦の下を通り過ぎていく電車を撮ること。映画でも健一が毎日、満員電車に揺られるシーンが随所に挿入されているが、監督いわく、これは男手一つで子育てに苦戦する健一の「枷(かせ)」を象徴するものだという。
「まず、健一と美紀が暮らす家がマイホームなのか、賃貸なのかって大きな差があると思うんですけど、健一の枷になるようにとマイホームの設定にしました。さらに、健一の通勤時間を、ドア・トゥ・ドアで1時間半、往復3時間に設定しました。そうすると、彼は毎日21時間で生きなければならなくなる。家のローンを支払うために満員電車で往復するなか美紀の面倒を見て、家事もしなければならない。そういった生活を表すうえで電車はわかりやすいと思っていたので、MVでも関わりを持てたらいいなと。今日も秦さんが歌っている最中に、いいタイミングで電車が通ったので、効果的に編集できると思います」
なお、子役の白鳥はMVの撮影は初挑戦。「山田さんとお話したときに電車の話をしたんですけど、電車は電気で走っていて、上の線から電気が流れているんだというのを初めて知りました」と父役の山田と映画の撮影の合間に交わした会話をうれしそうに振り返りつつ、MVの撮影では直前まで緊張していたという。しかし撮影が始まると、白鳥自ら「監督、ランドセルはどうしますか?」とスタッフも気付かなかった小道具の処理を指摘する場面も。撮影が長引いても笑顔を絶やさないタフさが印象的で、飯塚監督も「今日もそうだったんですけど、子役という感覚をもたずにやれたので、すごいなと思いました」と、対等な関係でシーンを作っていける白鳥を頼もしく感じた様子。
白鳥といえばドラマ「凪のお暇」「テセウスの船」など出演が相次ぐ超人気子役だが、忙しさを乗り切る秘訣を訪ねると「毎回、朝に栄養ドリンクを飲んで目がパチッと覚めます。あとは現場の人たちはみんな優しくて、おしゃべりをしているときに、お芝居について『こうしたら?』とアドバイスをいただくこともあります。みんなと楽しくしゃべって、お芝居を楽しくやるというのが毎回やっていることです」と、はつらつとパワーの源を語っていた。
映画『ステップ』主題歌「在る」MVは、近日公開予定。(編集部・石井百合子)