信長がハマりすぎ!「麒麟がくる」染谷将太の演技が光る映画7選
現在放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」で、これまでの織田信長像を大きく覆すような怪演を見せている染谷将太。近年快進撃が続く染谷だが、実は7歳のときから映画に出演し、子役としても活躍。その高い演技力は映像関係者のなかでも、高い評価を受けていた。そんな染谷の芝居のレンジの幅広さが実感できる映画7選を紹介する。(文・磯部正和)
『ヒミズ』(2012)
古谷実の人気漫画を映画『愛のむきだし』などの園子温監督が実写映画化。染谷は「普通のまっとうな大人になる」ことを夢見ていたが、ある事件をきっかけに、運命が激変してしまった中学校3年生の少年・住田祐一を演じる。“立派な大人”になることを望む少年が、自分では抗えない要因によって、いい意味でも悪い意味でも覚醒していくが、結局はどんな結末であれ、“立派な大人”になることを貫く。非常に難易度の高い役だが、染谷は住田という少年を驚くべき繊細さで演じている。複雑化する内面を漏れ出るように吐露する表情は、いま大きな話題になっている大河ドラマ「麒麟がくる」の織田信長の表現に通じるものがあると感じられる。本作で染谷は共演の二階堂ふみと共に、第68回ベネチア国際映画マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した。
『寄生獣』(2014)
岩明均の人気コミックを、『永遠の0』などの山崎貴監督が映画化。海辺に漂着した小さな寄生生物が、人間たちを凌駕していく姿を描いたSFサスペンス作品。右手をパラサイトに寄生されてしまい、壮絶なる戦いに巻き込まれていく高校生・泉新一を染谷が、新一に宿したパラサイト・ミギーを阿部サダヲが演じる。染谷と言えば、やや癖のあるキャラクターにふんすることが多かったが、本作ではごく普通の高校生の巻き込まれ感を非常にうまく表現。人間をむさぼるパラサイトたちの凄惨なシーンが多数存在するが、染谷の自然な演技や新一とミギーとのコミカルなやり取りが絶妙で、観賞後感も悪くない。染谷&阿部の演技派の会話劇はニヤリとしてしまう。
『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』(2014)
『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』などの矢口史靖監督が手掛けた林業をテーマにした物語。染谷が演じるのは、大学受験に失敗し進路が決まらないなか、軽い気持ちで林業研修プログラムに参加した青年・勇気。勇気はとにかく根性がなくチャラい若者で、観ている方はイライラを募らせる。一方、勇気の先輩となる伊藤英明演じるヨキが林業に熱い思いを馳せているだけに、このコンビの温度差が非常にコミカルだ。本作で劇的欲求が得られるのは、勇気がどれだけ変わるか。その意味で、序盤の勇気の軽薄さがムカつけばムカつくほど後半盛り上がるのだ。その意味で、染谷のヘタレっぷりは「最高」と言えるほど抜群だ。
『映画 みんな!エスパーだよ!』(2015)
染谷演じる突然超能力を使えるようになった男子高校生の鴨川嘉郎が、他の超能力者たちとのバトルする姿を描いた本作。とは言いつつ、基本的にはエロ要素が高いコメディー作品。『ヒミズ』でタッグを組んだ園子温監督のもと、染谷は住田祐一とはまったく別キャラクターを怪演している。嘉郎は、TENGA片手に「僕は運命の人と出会うために生まれてきたんだに」と真野恵里菜や池田エライザら美女のあいだで右往左往する染谷の姿は、とても愛らしい。
『バクマン。』(2015)
プロの漫画家を志す高校生の真城最高(佐藤健)と高木秋人(神木隆之介)の奮闘を描いた本作。染谷が演じたのは、二人に立ちふさがるライバル新妻エイジ。原作ファンのなかでも人気の高いエイジは、若き天才漫画家という立ち位置。染谷自身もエイジをどう表現するか悩むところが多かったというが、劇中では主人公の敵役という役割でありつつも、二人に影響を与え奮い立たせるカリスマ性が爆発。なかでも、漫画という文科系のカテゴリーにもかかわらず、アクションシーンで表現されたバトルシーンの躍動感は、「映像化する意味がある!」と唸らされる秀逸なシーンだ。
『初恋』(2020)
新宿歌舞伎町を舞台に、余命を宣告されたプロボクサー・葛城レオ(窪田正孝)と、ヤクザに追われた少女・モニカ(小西桜子)の“初恋”を描いた三池崇史監督流オリジナルラブストーリー。染谷は、ヤクザながらも、悪徳刑事・大伴(大森南朋)と繋がる策士・加瀬を演じているが、この男がとにかくゲスい。ヤクザを演じているのは、武闘派・権藤を演じた内野聖陽をはじめ、塩見三省、村上淳ら濃い俳優たちばかり。そんななか、染谷は内野と共に劇中ではやりたい放題。ある意味、本作のなかでもっとも“おいしい”役柄と言える。染谷自身も「面白がってやれる役」と話していたように、キレキレのクレイジーヤクザを堪能できる。
『さよなら歌舞伎町』(2015)
こちらも歌舞伎町のラブホテルを舞台にした男女5組の群像劇。染谷演じる高橋徹は、周囲には一流ホテルに務めていると嘘をつきながら、ラブホテルで店長をしている男。ラブホにやってきた、年齢も職業も違う事情を抱えた男女の人生が交差していくが、徹の現状を受け入れられないプライドの高さが、随所に滲み出てくる役作りには舌を巻く。とにかく煮え切らないナヨっとした感じは、染谷以外では表せないほど絶品だ。同棲しているものの、倦怠期を迎えたミュージシャンを夢見る恋人・沙耶(前田敦子)と、偶然ラブホテルで鉢合わせしてしまうシーンの二人のやり取りは生々しくて非常に見応えがある。