唯一無二の女優!戸田恵梨香に魅了される映画7選
ドラマ「野ブタ。をプロデュース」や「大恋愛~僕を忘れる君と」、「SPEC」など出演したドラマが続々と再放送され、改めて女優・戸田恵梨香の力量にスポットライトが当たっている。冷静と情熱、その両面を併せ持ち、凛々しいオーラを放つ彼女。今もっとも注目を浴びている女優のひとり、戸田恵梨香の魅力が詰まった映画7選をお届け。(文 ・成田おり枝)
『DEATH NOTE デスノート』(2006)
大場つぐみ(原作)と小畑健(作画)による大ヒットコミックを実写化。2006年に 、『DEATH NOTE デスノート 前編』『DEATH NOTE デスノート the Last name』とし て前・後編が連続公開された。“デスノート”を所有するキラこと夜神月と、天才探偵のLとの対決を描く本シリーズ。戸田は、伝説のアイドルでキラ信者の“ミサミサ”こと弥海砂(あまねミサ)をキュートに演じ、鮮烈なスクリーンデビューを果たした。
トレードマークのツインテール&ゴスロリ系ファッションがどハマり! アイドルオーラいっぱいの笑顔や、ライトへの「彼女にしてください!」というストレートな告白、ほかの女の子とデートしちゃイヤだと嫉妬する姿もそのすべてが愛らしく、観客の目を釘付けにした。キュートなだけでなく、彼女の悲しい過去や壮絶な監禁シーンまでを演じきり、紛れもない女優魂を感じさせた。漫画実写化の成功例のひとつとして挙げられることも多い本シリーズだが、夜神月役の藤原竜也、L役の松山ケンイチだけでなく、戸田のハマりぶりもその成功に大きく貢献。シリーズ10年ぶりの正統続編『デスノート Light up the NEW world』(2016)にも戸田のミサミサが登場し、ファンを喜ばせた。
『阪急電車 片道15分の奇跡』(2011)
片道わずか15分のローカル線、阪急今津線の電車内を舞台にした、有川浩の小説を映画化した群像ドラマ。偶然同じ車両の乗り合わせた人々の、人生がほんの少し重なり合う瞬間をつづる。戸田が演じたのは、女子大生のミサ。ショートパンツからスラリと美脚をのぞかせ、溌剌とした魅力を発揮した。戸田の関西弁も耳にすることができる。
周囲からも「かっこいい」と評判の彼氏(小柳友)が大好きで仕方ないといった様子のミサだが、なんとその彼氏はDV男……。少しでも気に障ることがあるとすぐにキレて、ミサを怒鳴ったり、張り倒したり。「もう別れてしまえ!」とやきもきとさせられるのだが、戸田はなかなか踏ん切りがつかないミサの恋心を自然体で演じ、“等身大の女の子”として受け入れられるキャラクターとして、ミサを作り上げた。戸田といえば、さっぱりとした清潔感が大きな魅力。ミサが彼氏への思いを吹っ切ってからは、その魅力をたっぷりと味わえる。また、ちょっとした気遣いや優しさが、誰かの前を向くきっかけになるかもしれないと思わせてくれる本作は、人との距離を保たなくてはいけないこの時期に、温かな気持ちになれる。
『劇場版 SPEC~天~』(2012)
再放送がスタートした「SPEC(スペック) ~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」の初の劇場版。SPEC(特殊能力)を駆使して未解決事件にあたる捜査官コンビが、国家を揺るがしかねない陰謀に挑む。本シリーズで演じた当麻紗綾は、驚異のIQと記憶力を持つが、異常なほど空気が読めないミショウの捜査官。変わり者キャラに血を通わせ、戸田の当たり役となった。
伏線だらけのストーリー、シリアスな展開に織り交ぜられた独特なギャグなど、堤幸彦ワールド炸裂の本シリーズ。一度観はじめたら、シリーズを追いかけたくなること必至! とりわけ個性たっぷりのキャラクター陣が大きな特徴で、当麻は今なお根強い人気を誇る役柄だ。戸田のスゴさは、当麻を変わり者で終わらせないところ。大好物のギョーザを頬張る姿はコミカル感満載なのだが、刑事としての信念をのぞかせる凛とした表情こそ、当麻の真骨頂。『劇場版 SPEC~天~』では、瀬文焚流(加瀬亮)を相手に、銃口を向け合いながら自身の思いを吐露する場面も大きな見どころだ。ドラマの一挙放送スペシャルに際して、戸田は「10年という月日が経っている事実に驚きを隠せません。つい最近のことだと(笑)。そのくらい自分にとって大きく、今でも側にいる存在です」とコメント。役柄に大きな愛情を注ぐ、彼女らしい一言だった。
『エイプリルフールズ』(2015)
大ヒットドラマ「リーガルハイ」の製作陣が集結した群像コメディー。エイプリルフールの日に人々がついた何気ないウソが、大騒動を巻き起こす。総勢27名もの豪華キャストが顔をそろえるなか、戸田が堂々と主演を務めた。
複数のエピソードが同時に進行し、それぞれが複雑に絡み合いながら、予想外の展開へと観客を誘う本作。問題を抱えたキャラクターが続々と登場するのだが、戸田の演じた対人恐怖症の清掃員・新田あゆみも超ワケアリ。一夜限りの関係をもった天才外科医・牧野亘(松坂桃李)に妊娠を告白し、エイプリルフールの冗談だと言い張る亘に業を煮やして、彼のいるレストランに乗り込むのだ。レストランではモップをぶん回したり、銃をぶっ放したりと、妊婦姿で大暴れ! 人とコミュニケーションを取るのが苦手な一方、ひとたび火が付くと、激しくパワフルに燃え上がってしまうというギャップがたまらない。そのパワフルさのなかに、新田のせつなさ、いじらしさもにじませてしまう戸田の演技力はさすがの一言で、人間ドラマとして楽しめるコメディーとなっている。また、戸田とは「崖っぷちホテル!」で共演したこともある、浜辺美波の初々しい姿も注目ポイントだ。
『駆込み女と駆出し男』(2015)
劇作家・井上ひさしが晩年に11年をかけて執筆した時代小説「東慶寺花だより」を映画化した本作で、時代劇映画に初挑戦した戸田。夫との離縁を求めて幕府公認の駆込み寺「東慶寺」に駆け込む女・じょごにふんした。
浜鉄屋の腕の良い鉄練り職人で、顔に火ぶくれを作りながら製鉄の仕事に励んでいるじょご。NHKの連続テレビ小説「スカーレット」では陶芸家・喜美子の生き様を演じ切った戸田だが、じょごと喜美子を見ていると、彼女には炎と格闘する役柄がよく似合うように感じる。それはきっと戸田の内面に、美しい炎が燃えているから。本作でも、浮気&暴力アリのクズ夫につらい目にあわされながらも、我慢強く、純粋さを失わないじょごの情熱を見事に表現していた。クライマックスでなぎなたを持って戦う姿も勇ましく、彼女の身体能力の高さを実感。また、女たちの聞き取り調査を行う戯作者志望の医者見習い・信次郎役の大泉洋との丁々発止の会話劇、ドキドキするようなやり取りも実にステキで、見応えのある1作となっている。
『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2018)
大ヒットした人気医療ドラマ「コード・ブルー」シリーズの劇場版。主人公・藍沢耕作役の山下智久をはじめ、新垣結衣、戸田、比嘉愛未、浅利陽介の5名がドラマに引き続き出演。医療の現場で真摯に命と向き合い、成長を遂げてきた藍沢たちのそれぞれの旅立ちを描いた。
戸田が演じる緋山美帆子は、負けん気が強くてサバサバとした女性で、劇場版では、恋人にキツい一言を放ってしまうことも。表面上は口が悪くて、キツいように見える緋山だが、恋人との関係に悩み、後輩の面倒をしっかりと見て、仲間の結婚に感涙するなど、彼女の内面から浮き彫りになるのは、あたたかな優しさと愛情深さ。なにより、不器用ながらも、いつも全力で困難に立ち向かう彼女の姿は、本シリーズが抱く大きな希望の光のひとつとなった。本作の完成披露試写会では、戸田が「死ぬまで大切にしたい作品ができあがった」と並々ならぬ思いを告白していたのも印象的。また緋山の性格がよくわかる、“引越しの荷物のまとめ方”もぜひチェックを!
『あの日のオルガン』(2018)
太平洋戦争末期、20代を中心とした若手保母たちが、子どもの命を守るために集団疎開した「疎開保育園」の実話を映画化。主演の戸田は、保母たちのリーダー・板倉楓役を担った。楓の別名は“怒りの乙女”。「子どもたちを守りたい」という正義感から怒りの炎を燃やす、姉御肌の戸田を堪能できる。
日本で初めて保育園の疎開をやり遂げるということは、相当な苦労と覚悟が必要だったはず。「とにかくやるの!」「気合入れなさい!」と若い保母たちのお尻を叩く楓だが、そうやって怒ることで自身も鼓舞しているよう。ひたむきな楓の姿が、観る者の心を打つ。ピンと背筋を伸ばして奮闘する楓が清々しく、戸田のキリリとした眼差しは美しい。撮影現場では大人数の子どもたちが騒いでしまうこともあったそうだが、そんなときには戸田がビシッとまとめてくれたとか。プレミア上映会では「未来ある子どもたちを守りたいと、初めて実感した現場」と語る一幕もあり、女優業を通してあらゆる発見を重ねている戸田。30代、40代とどのような女優になっていくのか、ますます目が離せない。