英国を代表するカメレオン俳優!トム・ヒドルストン七変化
紳士的な魅力とその実力で、人気を獲得する英国俳優たち。中でも、ミステリアスな雰囲気を携えていながら、どこか可愛らしい魅力も兼ね備えるのが俳優トム・ヒドルストン(39)だ。トムヒの愛称で親しまれる彼は、2001年に俳優デビューを飾って以来、舞台・テレビドラマ・映画で王立演劇学校(RADA)仕込みの確かな演技力を発揮し、役柄ごとに印象がガラリと変わる表情を魅せてきた。ここでは、そんなトム・ヒドルストンのカメレオンのような変幻自在の演技が印象的だった7作品を紹介する。
素顔のトムヒが垣間見える!『家族の波紋』(2010)
裕福な家庭で育ったエドワードは、ボランティア活動を行うためにアフリカへと旅立つことを決意する。母のパトリシアは、愛する息子との別れを惜しみ、家族全員を別荘に集め、別れまでのしばしの時を楽しもうとするのだが、父だけは姿を見せなかった。そして、残りの時間を楽しむはずだった家族の間にできた溝が、次第に浮き彫りとなっていく。
何気ない日常を絵画のように映し出した本作でトムが演じたのは、主人公の青年エドワード。別荘へとやってきて、家族と共に過ごす中で浮かべる苦悩の表情が素晴らしく、全編を通して、非常にナチュラルな演技を魅せる。とある家族の日常風景を映し出したかのような作品であるため、まさにトムの素顔そのものを観ているかのような錯覚に陥るのだ。演技とは思えないほどのリアルさを醸し出すトムの表情は、ファン必見である。
悪戯の神がハマり役『マイティ・ソー』(2011)シリーズ
マーベル映画『マイティ・ソー』シリーズでトムが演じるロキは、ソーと共にオーディンの息子としてアスガルドで育てられたが、実は、敵対関係にあるヨトゥンハイムの長ラウフェイの息子だったことが判明する。そのことで、ロキはオーディン抹殺を企て、さらには狡猾な手段を駆使して兄弟として育ったソーまでをも追い詰める。続く『アベンジャーズ』でのニューヨーク決戦では、宇宙種族チタウリと協力し、地球侵略を画策。その後も常に信用ならぬ存在感を発揮し続けたが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では、最凶の敵サノスを前に男気ある行動を見せた。
トムの代表作と言えば、間違いなく『マイティ・ソー』シリーズであろう。当初は主人公ソーのオーディションを受けたトムだったが、製作陣の判断により、“悪戯の神”ことロキ役に抜てきされた。2本のツノが特徴的な黄金の兜を被りこなせる俳優は、おそらくトムしかいない。常に何かを企み、不敵な笑みを浮かべながら、ソーの前に現れるロキを憎たらしくも魅力的に演じてみせたトムは、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)で最も活躍した俳優のひとりとして、間違いなく名前が挙がることだろう。
人生を悲観した吸血鬼『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013)
吸血鬼のアダムはミュージシャンとして活躍しながら、数々のギターコレクションを所有するような男だが、どこか永遠に生き続けるその人生を悲観し、自ら命を絶とうとさえ考えていた。そんな中、吸血鬼の恋人イヴが彼の元を訪れ、再会を楽しもうとするが、トラブルメーカーであるイヴの妹エヴァまでもやってきて、状況は一変する。ジム・ジャームッシュ監督による同作で、吸血鬼アダムを演じたトムは、鬱屈とした表情を浮かべ、心に影を落としたキャラクターを好演しており、その美しさが際立つ。
伝説のカントリー歌手を熱演『アイ・ソー・ザ・ライト』(2015)
1940年代のアメリカで活躍する、カントリーミュージックの新鋭ハンク・ウィリアムズは、その才能を遺憾なく発揮する中、私生活は波乱の連続だった。妻のオードリーとの関係は悪化していき、アルコール依存による自堕落な生活は、次第にハンクの身体を蝕んでいく。29歳という若さでこの世を去った伝説のカントリー歌手ハンク・ウィリアムズを演じたトムは、圧倒的な歌唱力と南部訛りのアクセントを駆使して、完全にハンクになりきっている。ボイストレーニングを5週間行うなど、徹底した役作りを敢行した結果がもたらした名演と言えるだろう。
その肉体美に刮目せよ!『ハイ・ライズ』(2015)
ロンドンにありながら、都会の喧騒から隔絶された高級マンション群“ハイ・ライズ”を舞台に、そこで生活する住人たちの姿を描く。医師ロバート・ラング役のトムは、紳士的な雰囲気を漂わせながら、どこか闇を抱えたような表情の数々が印象深い。非常に難解な作品ではあるが、序盤でその肉体美を存分に見せつけるトムを観るためだけでも一見の価値あり!
個性派俳優としての才能を証明『クリムゾン・ピーク』(2015)
ギレルモ・デル・トロ監督が手掛けた本作は、謎多き紳士トーマス・シャープに作家志望のイーディスが心惹かれていくさまを描いた作品で、準男爵シャープにふんするトムの怪演が非常に際立つ。何やら大きな秘密を抱えた男を、往年の怪奇俳優を彷彿とさせるような個性的な存在感で演じており、冷血っぷりを醸し出すクールな顔立ちで、姉との秘め事に興じる姿はなんとも官能的である。
屈強な傭兵役で新境地開拓!『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)
『GODZILLA ゴジラ』(2014)に続く、モンスター・ヴァース第2弾として公開された本作は、アメリカを代表するモンスター・キングコングが生息する髑髏島(どくろとう)へとやってきた人間たちの末路を描き出すアクション。トムは、元イギリスSAS大尉で、現在は傭兵として活動するジェームズ・コンラッドを演じており、これまでの作品で魅せてきた両性具有な魅力とは異なる、たくましい表情の数々をいくつも魅せる。そのアクション俳優ばりの立ち居振舞いは非常に男臭く、新たな境地を開拓した。
ここで紹介した作品以外にも、トムはケネス・ブラナー主演の「刑事ヴァランダー」やスパイドラマ「ナイト・マネジャー」といったテレビドラマでも活躍している。これからも、トムは確かな演技力とその美しさで、私たちを魅了してくれることだろう。(文・構成:zash)