斎藤工、岩井俊二監督の新作は「本当に自宅で撮影」
俳優の斎藤工が28日、都内スペースFS汐留で行われた『8日で死んだ怪獣の12日の物語 -劇場版-』公開直前イベントに来場し、全編ほぼリモートで撮影された本作の裏側を語った。この日は共演者ののん、武井壮、穂志もえか、樋口真嗣、監督の岩井俊二も来場した。
本作は、『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督ら5人の監督が発案したリレー動画企画「カプセル怪獣計画」の番外編として、YouTubeで配信された短編シリーズの劇場版。通販サイトで新型コロナウイルスと戦ってくれるというカプセル怪獣を購入し、飼育するサトウタクミ(斎藤)と、周囲の人々の物語が展開する。
「やっとお披露目の日を迎えることができました」と晴れやかな顔を見せた岩井監督。短編企画から劇場版が生まれたプロセスについて、「僕の中でもものすごく短い期間で作りあげた映画。今日は7月28日ですが、最初に樋口監督から話をもらったのが4月28日で、ちょうど3か月前。それまで何もなかったのに、卵を育てて、怪獣にするというアイデアを思いついたら、あれよあれよと大きくなって。気付いたらこのメンバーで映画を作ることになった。つらいコロナのステイホームの中で、僕自身が目標を見いだせて、救われたような気持ちでいます」と感慨深げに振り返る。
短編から主人公サトウを続投する斎藤も「コロナの期間は失業だったり、“失う”ということもあるんですが、それだけでなく作品が生まれるという大いなる機会にもなったと思います。コロナがなかったら、おそらくこのメンバーで作品を作ることもなかったと思うので、この映画がネットから生まれて、劇場版まで大きく育ち、さらに飛躍していくのを心からうれしく思います」と続ける。
本作は全編ほぼリモートで撮影したとあって、岩井監督は役者陣に画面越しに指示を与えていたという。そんな中で「唯一、お会いしたのは岩井さんです。僕が育てる(劇中の)怪獣たちはとてもデリケートなものなので、岩井さんに宅配してもらったんです」と明かした斎藤。さらに斎藤が登場するシーンの撮影場所はスタジオではないか、というネットの書き込みがあったというが、「あれは本当に自宅。たまに最近、(この作品の)テレビCMが流れてくるんですけど、本当にあそこで暮らしているんで、不思議な気持ちです」としみじみ語る斎藤。思わず、のんが「あんなにきれいなんですか!」と驚いてみせると、斎藤は「あれは画角の外に押しやってるだけ。普段はとんでもないですよ」と照れくさそうに付け加えた。
本作は7月31日より全国のミニシアターで上映されるが、その後、8月7日からはオンライン上映も決定。収益は劇場興行と同様、本作の上映館にも還元されるという。斎藤は「今、多くの現場が止まっていて。上映する作品がないという事実があります。名画座みたいに名作を上映するのもすばらしいですが、新作に期待するファンもいます。その中で、コロナの速度に負けないスピードで岩井さんがフィルムメイキングをして。この作品を数か月で打ち出したのは、おそらくミニシアター支援の新しいモデルケースになるんじゃないかと思います」とミニシアターで上映する意図をアピール。
岩井監督も「僕自身、学生時代にたくさんの映画を観た場所もミニシアターだったし、僕の作品の大半を上映してくれたのもミニシアターだった。だから微力ながらも、こういう形をとらせていただきました」とコメント。さらに「オンラインにしたことで、意外とミニシアターがないエリアの方から、ありがとうという声があって。コロナの中における、劇場の在り方の進化形の片りんを見たような気がします。コロナに負けるのではなく、ここから何かを見いだして、手に入れるきっかけになってくれたらうれしいと思います」と力を込めた。(取材・文:壬生智裕)