ミニシアター、シニア層が激減&東京が厳しく…今後の課題とは
新型コロナウイルスの影響で経営危機に陥るミニシアターを救うために立ち上がったプロジェクト「SAVE the CINEMA」「ミニシアター・エイド基金」「SAVE the CINEMA movement」の活動報告会見が18日に下北沢のアレイホールで行われた。パネルディスカッションでは、映画配給会社太秦の小林三四郎代表、映画監督の舩橋淳、深田晃司、井上淳一、諏訪敦彦、ユーロスペースの北條誠人支配人ら多くの映画関係者が登壇した。
本イベントは、新型コロナウイルスの影響で経営危機に陥るミニシアターを救うために立ち上がった三つのプロジェクトの活動報告をする場として実施。報告会の後には、関係者が集まったパネルディスカッションが行われた。
新型コロナウイルスの影響により、東京都が出していた休業要請が解除され、東京・渋谷のミニシアター、ユーロスペースが営業を再開したのは6月1日のことだった。営業再開後の現状について尋ねられた北條支配人は「映画館の仕事というのは、もうけられる時にとにかく徹底的にもうけて、成績が芳しくない時はひたすら耐えて生きていくもの。しかし今は(感染症対策のため)座席も半分で営業している状況であるため、それも難しい。固定費などをきちんと払っていけるんだろうかという気持ちが日に日に強くなっている」と真情を吐露する。
もちろん劇場では上映が終わるたびに換気を行い、エレベーターやドアノブ、座席を消毒するなど感染症対策を徹底している。しかし、都内の感染者数が200人を超えたといったニュースが広まると、動員にも影響があったという。北條支配人も「比較的若いお客さんは来てくださっているんですが、シニア層は全く動かなくなりました」と危機感を募らせる。
映画館に客足が戻らなければ、そこに映画を供給する側の映画配給会社も厳しい状況に陥る。太秦の小林代表は「ローカル(地方)が大変だというのは、昔からそうなんですけど、今は東京と大阪の比率でいうと、大阪の比率が上がっています。ということはつまり、東京が極端に落ちているということで、それは非常に深刻な事態。もちろん全体的に厳しいんですが、うちの作品で言うと、東京が厳しくなってきたという実感があります」と現状を報告した。
「SAVE the CINEMA」プロジェクトではミニシアターへの緊急支援を求める要望書を作成し、それを集められた9万筆以上の署名と共に政府や関係省庁に提出もした。その時のことを振り返った舩橋監督は「第1次補正予算が成立した後に、文化庁の方に『とても使いにくいし、そもそもなぜミニシアターが対象に入っていないのか』と尋ねたら、『ミニシアターとお付き合いがなかったから』と言われてビックリしたことを覚えています。彼らは映画の製作や映画祭の上映などの支援をしてきたはずなのに、ミニシアターも文化であるという認識が伝わっていなかったんです。彼らによると、商業施設の一つなので、経産省の管轄になるのだと。(話し合いは)そうしたことからスタートしないといけなかった」と説明。しかしそれだけに「第2次補正予算に、ミニシアターへの支援が含まれたということはポジティブに考えています」とホッとした様子を見せた。
そんな状況に深田監督も「ドイツの文化相は『アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在』と言ったが、それをこの日本で、この有事に文化庁長官に言わせることができなかったのはわたしたちの問題でもある。今まで関係省庁としっかりと関係性を作ることができていなかったので、ここからがスタートライン」と感じたと明かした。
今回のプロジェクトでは当初、大手の映画会社との連携も視野に入れていたが、なかなか大手とは一緒の方向には向かず、結果的に連携することはかなわなかったという。だが、それゆえに今は「向こうから来ないから、こちらから行くしかない」と考えているという深田監督。それに続くように、諏訪監督が「個人的な意見ですが、それはやるべきだと思います。これ(ミニシアター)は社会の中で重要なものなのだ、存在させないといけないものなのだというのは映画界全体の問題だと思いますから。そうした共通認識も、今なら作れるんじゃないかなと思うんです。非常に楽観的な意見かもしれませんし、実際には難しいかもしれません。でも個人的には(大手との連携は)やりたいなと思っています」とその思いを語った。(取材・文:壬生智裕)