残虐すぎて途中退場者が続出した問題作…『異端の鳥』予告編が公開
第76回ベネチア国際映画祭においてあまりの残酷さに途中退場者が続出した問題作『異端の鳥』の日本版予告編が公開された。新型コロナウイルス感染拡大による影響で公開延期となっていた同作だが、新たに10月9日よりTOHOシネマズシャンテ他にて全国公開されることも決まった。
第2次世界大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるために、たった一人で田舎に疎開した少年が差別と迫害に抗いながら強く生き抜くさま、そして異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”の姿を赤裸々に描いた本作。ベネチア映画祭のコンペティション部門で上映されると、少年の置かれた過酷すぎる状況に拒絶反応が起こり、途中退場者が続出した。その一方で、ラストまで見続けた観客からは10分間のスタンディングオベーションが贈られてユニセフ賞も受賞、本年度のチェコ・アカデミー賞(チェコ・ライオン)では最多8部門で受賞を果たすなど、評価も得ている。
原作は、ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表し、ポーランドでは発禁書となった「ペインティッド・バード」。チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウ監督が11年もの歳月をかけて映像化を果たした。
今回公開された予告編は、主人公の少年が大切そうにか弱いフェレットを抱え、息を切らしながら懸命に何者かから逃げようとする映画のオープニングシーンで幕を開ける。そして次の瞬間、体当たりしてきたのは、彼と背丈の変わらない幼い少年だった……。家族とはぐれた少年は、瞳や髪、肌の色が違うために行く先々でよそ者・異端扱いされ、非道な差別を受けることに。戦争という狂気のうねりの中で多くの人命が虫けらのように扱われ、人間が持つすさまじい残虐性があぶり出されていくことになる。
撮影監督は、『コーリャ愛のプラハ』などオスカー受賞作品も手掛けたチェコ映画界きっての巨匠ウラジミール・スムットニーが務めた。全編モノクローム35ミリフィルムで撮影された映像は、残酷でありながらも自然にあふれた田舎の雄大な景観と見事に調和し、強い余韻を残す。地獄の旅路の果てに少年が見る風景とは? ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ウド・キア、ジュリアン・サンズらが出演している。(編集部・市川遥)