坂口拓、壮絶77分ワンカットの死闘!トラウマ乗り越え『狂武蔵』公開
21日、俳優のTAK∴こと坂口拓が、東京・中野区のユーデンフレームワークスで行われた映画『狂武蔵』の公開初日記者会見に、監督の下村勇二と共に出席し、壮絶な撮影から、9年を経て迎えた初日の喜びを語った。
本作は、『RE:BORN リボーン』などの坂口が主演を務め、剣豪・宮本武蔵と吉岡一門との決闘を描いたアクション時代劇。坂口が一度は俳優引退を決意するほどに壮絶だった撮影から9年、追加撮影や再編集を施し、劇場公開が決定した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、対面の初日舞台あいさつができなかったこともあり、初日を迎えたこの日は、下村監督のスタジオで記者会見が開催された。
本作の原案となったのは、園子温監督幻の企画「剣狂-KENKICHI-」。この作品で坂口は、ワンカット・ルールなしで10分間戦う予定だったが、撮影間近で企画がとん挫。「当時のプロデューサーが『最後に言いたいことはありますか?』と謝ってきたんですよ」と振り返った坂口は「スタッフ、アクションマンはこの日にかけてきたから、撮影機材を返す前日に、一回だけワンカットで撮影できないかと。それで一発勝負で撮影をすることになった」と明かす。
そこで挑んだのが、『狂武蔵』のベースとなる、武蔵が400人の敵に挑む、77分、ワンシーン・ワンカットという壮絶な死闘。坂口はその時「10分リアルにやるのも、70分以上リアルにやるのも一緒だから」という思いだった。だが、撮影開始5分で指の骨が折れ、その後も肋骨(ろっこつ)が折れるなど、壮絶な撮影は坂口の心にも大きな傷を負わせ「当時は映像を観ると吐きそうになったりして、ヒドかった」という。ここで燃え尽きた坂口は、一度は俳優引退を決意するほどだった。
時を経た公開にあたり、実施された追加撮影には、『キングダム』で坂口と共演した山崎賢人(崎はたつさき)も参加することになった。坂口たちの本作にかける熱い思いを聞いていた山崎は、出番が終わっても楽屋に戻ることなく、ずっと現場を見学していたという。
撮影時の山崎について、下村監督が「彼(坂口)の戦っている姿を、遠くからでいいので見させてくださいと。ようやくこの日が『狂武蔵』がクランクアップできる日だということは知っていたので、一秒たりともまばたきをしたくないんだと。彼(坂口)の行動を見ていたいと言ってくれた。一般的には優しそうな、好青年のイメージがありますけど、本当に熱い人だと思います」と明かすと、坂口も「熱い男だよね。熱い思いでやってくれてうれしかった」と同意。さらに「彼の第一印象は男の子という感じだった。でも『キングダム』をやっていくうちに、どんどんと男の顔に変わっていった。俳優さんってすごい職業だなと思いましたよ。僕は俳優と言っても形だけの職業ですから」とおどけながらも、山崎を称賛していた。
ついに完成した作品が初日を迎え、感無量な様子の坂口。トラウマだった本作にも、ようやく客観的に向き合うことができるようになったという。「これは俳優さんができるようなやり方じゃない。だからこそ、自分が役者をやるときは命を削らせてもらって。それですべてを出し切ったら引退したい。次は侍映画を作るんですが、こういう時代だからこそ、大切なものを残したい。そのためには、まだまだ体を張れる年なんで。頑張ってやりたい」とアクションに身をささげていく決意を語った。(取材・文:壬生智裕)
映画『狂武蔵』は全国公開中