「エール」でも好演!仲里依紗のキャラが光る映画7選
NHK連続テレビ小説「エール」で、夫(野間口徹)とともに喫茶バンブーを切り盛りする風変わりな妻・梶取恵をユーモラスに演じている女優の仲里依紗。妄想癖のある独特のキャラクターがなんともチャーミングだが、ちょっぴり“クセ”の強い役をやらせたら、彼女は俄然、輝きを増す。あるときは人情あふれる粋な妊婦、あるときはワル全開のダークヒロイン、またあるときはプロレスオタクの編集者……。今年4月より自身のYouTubeチャンネルを開設し、その自由でファンキーなパーソナリティーも話題となっているが、仲の過去作をあらためて振り返りながら、その唯一無二の魅力を深掘りする。(坂田正樹)
『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』(2010)
テレビのヒーローに憧れる教師・市川新市(哀川翔)の変貌と活躍を描いた『ゼブラーマン』の続編。2025年、架空都市ゼブラシティを舞台に、15年間の記憶を失った市川が、世界征服の野望を抱く悪党に立ち向かう。仲のキャリアの中で最もインパクトの強いキャラクターといえば、本作に登場するゼブラクイーン! セブラシティの広告塔を担うスーパー“ロック”アイドルとして、歌にダンスにバトルにと、つねにエロかっこいいパフォーマンスで街を悪に染め上げる。特にオープニングを飾るゼブラクイーンのPV映像は、マドンナやレディー・ガガも真っ青のハイクオリティー。つねにナンバーワンでなければ気が済まない筋金入りの女王様気質が、我らがヒーロー、ゼブラーマンを追い詰める。
『時をかける少女』(2010)
筒井康隆の同名SF短編小説を新たな視点で映画化した青春ドラマ。入院中の母の代わりに1970年代にタイムリープした娘・あかり(仲)が、ある人との約束を果たすため奔走する。アニメーション版でも主人公の声を担当した仲の制服姿が初々しくて、まぁ~かわいいこと! 今でこそ演技派女優として活躍している彼女だが、当時のキラッキラのアイドル感はまぶしいくらいに魅力的だ。さらに劇中、1972年にタイムリープするはずが、1974年に紛れ込んだあかりは、映画監督志望の大学生・涼太と出会うのだが、この涼太を演じているのが、何を隠そう、のちの夫となる中尾明慶。まさに仲の青春がたっぷり詰まった思い出深き作品といえるだろう。
『モテキ』(2011)
原作者の久保ミツロウがテレビドラマ版のラストから1年後を舞台に書き下ろしたオリジナルストーリー。モテキが終わり、さえない日々を送る青年・藤本幸世(森山未來)が、ニュースサイトの記者になった途端、第2のモテキを引き寄せる。森山とガッツリ絡む長澤まさみ、麻生久美子らとは違い、仲の出番はわずか7分。ガールズバーに勤務するシングルマザー・愛という役柄だが、当初、幸世の心の声は「こういう(濃い)メイクの人、好きじゃない!」と否定的だったが、あっという間に形勢逆転。豊満な胸で幸世を食いつかせ、真理を突いた巧妙トークで酔いつぶす。そして最後はちゃっかりお持ち帰り……!? 限られた出演時間のなかでも爪あとを残す存在感はさすが!
『生きてるだけで、愛。』(2018)
本谷有希子の同名小説を映画化した恋愛ドラマ。感情を制御できない引きこもりの女・寧子(趣里)と、恋人である彼女と真摯(しんし)に向き合わない男・津奈木(菅田将暉)の生きざまを活写する。ある日突然、二人の間に割って入る津奈木の元カノ・安堂。心変わりした彼女は「彼とヨリを戻したい」と寧子に激しく詰め寄るが、そんな高圧的な女を仲はハマリ役と思わせるほど見事な表現力で演じてみせる。雰囲気はバリバリ仕事をこなすキャリアウーマン。顔中に“いじわる”が充満し、心のなかは被害者意識のかたまり。結果、安堂の傲慢なやり方が寧子の社会復帰を手助けし、二人の絆を深めることになるのだが、フワフワしたところが一切ない、終始厳しめの仲も実に魅力的だ。
『パパはわるものチャンピオン』(2018)
板橋雅弘と吉田尚令の絵本「パパのしごとはわるものです」「パパはわるものチャンピオン」を映画化した感動ドラマ。プロレスラーの棚橋弘至がふんする悪役覆面レスラー“ゴキブリマスク”の生きざまと家族の絆を描く。仲が演じるキリン出版の編集者・大場ミチコは、メガネ姿がキュートな超プロレスマニア。試合に行ける日は会場で声を枯らしてゲキを飛ばし、行けない日もプロレス居酒屋で狂喜乱舞。編集長(大泉洋)に何度断られても「プロレス特集を組ませてくれー!」と直訴し、偶然知り合った少年・祥太(寺田心)がゴキブリマスクの息子だと知るや否や、我を忘れて猛接近。「プロレスは生きざまだ!」と豪語するその熱血ぶりは、まさに仲の真骨頂。ラストマッチに大号泣するシーンでは、思わずもらい泣き。
『ハラがコレなんで』(2011)
『舟を編む』『あぜ道のダンディ』などの石井裕也監督によるヒューマン・コメディー。臨月のヒロイン・光子(仲)が、大きなお腹を抱えながら義理人情のために奔走する姿を描く。貧しい長屋で育った光子は、とにかく人の不幸を放っておけないお節介な女性。リストラされたおじさんに有り金全部渡したり、昔世話になった寝たきりばあさんを率先して介護したり、さらには潰れそうな食堂があれば客引きに精を出し、愛を打ち明けられない男女がいれば恋のキューピットも買って出る。義理人情を何よりも大切する光子のモットーは、とにかく“粋”に生きること。「いい風が吹いていないときは昼寝が一番!」……自由で肝っ玉の据わったところは、素の仲にちょっぴり似ているかも?
『パンドラの匣』(2009)
太宰治の同名小説を『ローリング』の冨永昌敬が映画化した青春ドラマ。ギリシャ神話にある「この世に不幸をまき散らした」という匣(はこ)をモチーフに、結核療養のために山里の療養所に入った少年たちの心模様を描く。終戦直後が舞台にもかかわらず、仲が演じる看護士・マア坊が出てきた瞬間、パーッと明るいポップな世界観にすり替わる。あざとくて脳天気、好きな人の前ではわざと気を引く行動をとったりする。まさに場違いな小悪魔的存在だが、川上未映子ふんする真面目な婦長・竹さんとのコントラストが絶妙で、硬軟織り交ぜた人間模様が実に楽しい。劇中、マア坊がシーツにくるまって遊ぶシーンが出てくるが、その自由奔放なパフォーマンスは気持ちをほっこりさせてくれる。