香取慎吾は世界に通じる!三谷幸喜、シットコムに寄せる期待
テレビドラマ、映画、舞台とこれまで何度もタッグを組んできた香取慎吾と三谷幸喜の最新作は、Amazonが製作するシットコム形式のドラマシリーズ「誰かが、見ている」。テレビシリーズとして深夜放送された「HR」(2002~2003)以来、18年ぶりのシットコムで世界に挑む香取と三谷が、強い思いを語った。
本作は、香取が演じる何をやっても失敗ばかりの主人公・舎人真一と、書斎の壁に偶然発見した“穴”から、彼の生活をのぞき見する隣人・粕谷次郎(佐藤二朗)らが巻き起こすドタバタを描いたシチュエーションコメディ。Amazon Prime Video で9月18日から独占配信をスタートする。
日本を含む世界240以上の国・地域で同時配信となるが、三谷は「もちろん世界の人々に観ていただきたいと思っています」と力強く語ると「香取さんというとても優れた俳優さんがいて、その人が演じるコメディを世界中の人に観ていただきたいという思いがまずありました」と企画のあらましを述べる。
そこにあるのは”俳優・香取慎吾”のポテンシャルはもちろん、肉体的な潜在能力の高さへの絶大な信頼。三谷は「僕は脚本家なのでセリフで笑わせようとする部分はありますが、それだけじゃない。セリフのないところで、彼の体を使った動きでも笑わせてみたい。きっと日本語がわからない人でも、彼の動きを面白がってもらえると思う」と自信をのぞかせる。
そんな三谷の期待に香取は「台本に書いてあること、三谷さんに言われた演出を自分のできるかぎりやるだけです」と控え目に語るが、ボディランゲージで世界に挑むことに「自信があるかないかと言われれば……あります」とニヤリ。「言語を越えて、ということではないですが、セリフがなくても笑ってもらえたり、感動してもらえたりする作品だと思います」と胸を張った。
これまでの三谷作品では、どちらかというと振り回される役が多かったという香取。しかし今回は、振り回す役という認識があり「意外と難しかったです」と苦笑い。それでも、三谷の香取に対する信頼は絶大なようで「一番うれしかったのは、稲垣(吾郎)さんがゲストに来てくれた回。公開リハーサルで、僕が突然プリンをテーブルに置いたんです。こういうことをすると嫌がる俳優さんもいるのですが、香取さんは僕が『こうやって食べてほしい』という思いを瞬時に察して、面白がって食べてくれた。これが信頼関係だと思いました」としみじみ語る。
再タッグを組む作品がシットコムというのも、2人にとっては刺激になったようだ。本作は基本的に1話30分を、カットすることなく長回しで撮影する。香取は「お芝居をしていて、汗をかいたり息が切れたりする。芝居中に自分の身体が変化する感じがとても気持ちがいい」と笑顔で語ると、三谷も「長回しがシットコムの条件ではないのですが、今回はお客さんを入れて観てもらうので、止めるとテンションが下がってしまう。お客さんに喜んでもらうことが第一条件だとすると、一気に撮った方がいい。それによって生まれる一番の効果は生々しさ」と見どころを語る。
また三谷が触れたように、本作には香取の盟友・稲垣吾郎もゲスト出演。2013年にバラエティー番組「SMAP GO!GO!」内で行われた三谷演出・脚本の生ドラマ企画「『古畑 VS SMAP』その後…」以来、7年振りの共演で、稲垣は劇中、日本を代表する演歌歌手“レッツ大納言”として登場する。
現場の稲垣について、香取は「もっと作り込んでくるのかなと思ったら、意外と現場で臨機応変に対応していた。そういう彼の姿は知らなかった」と新発見があったといい「長い付き合いですが、緊張感はありました」と共演を楽しんだ様子。三谷も「演出家以前に、お客さんとして、2人のファンとして、稲垣さんが最初に香取さんの部屋に入ってきた瞬間の高揚感が『これぞ、シットコムだよ』みたいな感じでワクワクしました」と振り返っていた。(取材・文:磯部正和)