『TENET テネット』で注目!キャット役エリザベス・デビッキが体現する女性像
クリストファー・ノーラン監督最新作『TENET テネット』で、一際鮮烈な印象を残すキャストが、ヒロイン、キャットを演じたエリザベス・デビッキ。190cm越えの長身が目を引く彼女だが、それ以上に類稀な演技力で、運命に抗う女性を魅力たっぷりに演じている。
1990年にフランス・パリで生まれたエリザベスは、5歳でオーストラリアのメルボルンに移り住む。ダンサーの両親のもと、幼少期からバレエに興味を持ち、演劇に転向するまでダンサーとして練習を積んだ。その背景もあってか、『TENET テネット』では、ふとしたしぐさのひとつひとつが優雅で常に目を奪われる。
大学で演劇の学位を取得し、奨学金にも選ばれるなど優秀な学生だった彼女は、2013年にレオナルド・ディカプリオ主演の『華麗なるギャツビー』(2012)でハリウッド進出。主人公のニックと親交を深める、時代の先を行くプロゴルファー、ジョーダン・ベイカーを凛とした立ち振る舞いで演じた。
長い手足と長身も手伝い、どこか浮世離れした雰囲気も漂うエリザベス。マーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)では、黄金の惑星ソヴリンの女王アイーシャ役を、文字通り全身黄金で演じ、常に相手を見下す傲慢なキャラクターを魅力的に表現。『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)で演じた、卓越した頭脳を駆使して犯罪組織を率いる悪女ヴィクトリア役もはまっていた。
『TENET テネット』は、アメリカのエージェント“名もなき男”(ジョン・デヴィッド・ワシントン)と相棒のニール(ロバート・パティンソン)が、「時間の逆行」を武器に、世界を救うミッションに挑む大作サスペンス。エリザベスが演じたキャットは、未来と現在を繋ぐ役割を持つ謎の武器商人アンドレイ・セイター(ケネス・ブラナー)の妻で一児の母。息子のために夫の支配に耐えていたが、セイターを追う名もなき男との出会いが彼女の運命を変えていく。
同作の記者会見でエリザベスは「男に騙されないような、力強い女性を演じていてとても魅力的だが、意識して役を選んでいるのか」という質問に「『強い女』と言っても、その力の源泉、形や見え方は様々だと思う」と回答。「一見弱そうに見える女性を演じることはあるかもしれません。そういう時は、自分なりに工夫して、その中にある芯をあぶり出すように演じる。それはそれで面白いものです」と語っている。
そのうえでエリザベスは、キャットについて「思わぬ事態に巻き込まれ、名もなき男やニールと関係性を構築していくなかで、次第に自分の中に宿る力を見出していく過程がとても素晴らしいと思った」と、まさにキャットの芯を見出すことを重要視したと言及。「こうしたジャンルの映画(スパイ映画)では珍しいことだけど、キャットは自分の思い描く自由のために戦い、主体性をもって行動する女性。だから、演じるのは楽しかったです」と力強く語っている。
本作で抜群の存在感を示した彼女は、Netflixドラマ「ザ・クラウン」で故ダイアナ妃を演じることが決定している。時代を超えて愛されるアイコンをどのように演じるのか。今後の活躍も期待される。(編集部・入倉功一)