花澤香菜、一度は諦めかけた芸能の道…見つけた声優という居場所
昨年字幕版が上映となり、SNSで大きな話題を呼んだ中国発の劇場版アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』。いよいよ公開となる日本語吹替版では、主人公の黒猫の妖精・シャオヘイ役に、花澤香菜が抜てきされた。子役としてキャリアをスタートさせ、今や人気、実力共にトップクラスの声優となった花澤だが、声優としてデビューした頃は「『棒読みだ』と言われ続けていた」と苦笑い。さまざまな出会いを通して前進していくシャオヘイと同じように「私は周りの人たちに助けられてばかり。そういった方たちのおかげで、ここまで来ることができました」と感謝をあふれさせる彼女が、シャオヘイの魅力や成長の原動力となった存在を語った。
もちもち感のあるほっぺ、食事シーン…シャオヘイが可愛すぎる!
中国のアニメ監督のMTJJが代表を務める寒木春華(HMCH)スタジオが制作した本作。人間の手による自然破壊で居場所を失った黒猫の妖精・シャオヘイが、妖精のフーシー(櫻井孝宏)、人間でありながら最強の執行人でもあるムゲン(宮野真守)らと出会い、人間と妖精の関係の間で、未来を切り開いていく姿を描く。
アフレコに先駆けて字幕版を観たという花澤は、「クオリティーも素晴らしく、アクションシーンもダイナミック。ギャグシーンでのユーモアのセンスも面白くて、すごく引き込まれた」とほれぼれ。「シャオヘイが可愛くて」と目尻を下げつつ、「わんぱくで、ちょっと生意気で。何を言っても憎めないようなところがある」と演じる役柄に愛情を傾ける。
「原音(中国語版)のシャオヘイの声もとても可愛いので、『これを演じるのか!』とハードルが上がりました」と猫と子供の可愛らしさを持ち合わせたキャラクターを演じる上では「プレッシャーもあった」というが、「少年の声として自然に聞こえるように意識して、あとはとにかく原音を頼りにして演じました。『ちぇっ』や『フン!』など、シャオヘイが何を考えているかを一言で表現しなくてはいけない場面もあって、そういったシーンは緊張感がありましたね。とても挑戦しがいのある役でした」と充実感もたっぷり。
シャオヘイの可愛らしさは、本作の大きな見どころだ。一挙手一投足も見逃せないキャラクターとなっているが、花澤が特におすすめするのが「食べているシーンは、すべてかわいい」と食事のシーン。「もちもち感のあるほっぺが、何かを食べるたびにふにょふにょと動くのがすごく可愛い! ほっぺがふっくらとしているので、シャオヘイの後ろ姿を見ても、ほっぺがちょっとはみ出しているんですよ」とシャオヘイが可愛くてたまらないといった様子だ。
宮野真守&櫻井孝宏との共演の感想は?
ひとりぼっちだったシャオヘイが、ムゲンとフーシー、それぞれの立場や考えを知り、自分の歩むべき道を見つけていく。ムゲン役の宮野の印象を聞いてみると、花澤は「ムゲンには一言発するだけで、吸い込まれてしまうような雰囲気があって。まるで人生を何周もまわってしまっているような、ムゲンの達観した感じや、かっこよさなど、宮野さんにぴったりだなと思いました」とニッコリ。
フーシー役の櫻井については、「私が共演させていただくときは、櫻井さんが無敵感のある役をやられていることが多いんです。なので櫻井さんが、あんなに叫んで、必死に戦っている役を演じられているのが、とても新鮮で!」と目を輝かせ、「櫻井さんが捨て身で戦っている! これは貴重である! と思いました」と興奮気味に語り、「ムゲンとフーシーの考え方は違うけれど、それぞれの気持ちがわかる。誰と一緒にいたいのか、どういう道を進むのかと考え、選択していくシャオヘイを通して、未来の可能性は無限大だなと実感しました。未来は、自分で作っていくものなんだと思いました」と本作から刺激も受けたという。
“棒読み”と言われた過去。「役者はいつまでたっても勉強」との言葉も励みに
「未来の可能性は無限大」と語る花澤だが、声優という自らが歩む道を見つけるまでには、「シャオヘイと同じように、人との出会いが欠かせませんでした」としみじみと語る。
「子役時代には、なかなかお仕事もいただけなくて。『これ以上続けられるのかな』と思って、高校を卒業するタイミングで一度は諦めようとしていたんです。でも当時、レギュラーのアニメのお仕事があって、キャスティングをしていた今の事務所のマネージャーに『やめようと思っている』とお伝えしたら、『声がいいからやめないで』と言ってもらえて。『もしかしたら、自分の居場所がここにあるのかもしれない』と思えた」と転機を告白。「あまり競争心も強くない方だし、『この世界でやっていくのは難しいぞ』とも感じていたんですが、必要としてくれる人がいるというのは、すごくうれしいこと。やりがいがあると思って、声優の道に進もうと決断しました」と振り返る。
14歳でアニメ声優デビューを果たし、17歳の時に出演した「ゼーガペイン ZEGAPAIN」では、「『棒読みだ、棒読みだ』と言われ続けて」と視聴者の反応を苦笑いで述懐。「まったく自信もないし、どうやったらうまくできるんだろうと悩んでいました」と語るが、そんなときに支えとなったのが「現場で出会った人々」だそう。「現場では、みなさんが『今のあなたにしかできないものがあるよ』と言ってくださった。それで頑張ることができました」と感謝しきりだ。
透明感ある癒しのボイスはもちろん、確かな演技力も身に付け、代表作を一つに絞れないほどの人気声優に成長した。花澤にとって、いつも背中を押してくれる言葉があるという。「私、地井武男さんが大好きで、地井さんがやっていらした『ちい散歩』も大好きだったんです。文化放送でラジオのレギュラー番組をやらせていただいているんですが、一度、私の誕生日に地井さんから肉声のメッセージを(ラジオ番組に)送っていただいたことがあって。『役者はいつまでたっても勉強です』という言葉をいただいて、『私もいつまでも勉強できるんだ!』と希望や勇気が湧いてきました。すごく心に残っていて、今でも自分を戒めるように思い出したり、背中を押してもらったり……。私にとって、大きな原動力になっています」と力強く語っていた。(取材・文・撮影:成田おり枝)
映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』は11月7日より全国公開