芦田愛菜、16歳が信じていること
『星の子』で新興宗教の信者である両親を持つがために周囲から偏見を持たれ、大好きな姉や親せきとも疎遠になるなか、自分の信じる道を模索するちひろを演じた芦田愛菜が、作品のテーマである信じることについて、16歳ならではの考えを明かした。
「信じるって日常生活でよく使う言葉ですよね。誰かを信じているとか自分を信じたいとか。それはどういうことなのかなと考えてみると、何もその人自身を信じているわけではなくて、自分が期待している人物像を思い描いているだけじゃないかと思うんです」と丁寧な言葉で、信じることについて独自の解釈を披露した。
「だから、そうでなかった時に、裏切られた、信じていたのにといった言葉が出てしまう。でも実際には裏切られたのではなく、その人のいままで見えてこなかったことが見えてきただけ」と続けた。つまり知らなかった側面が見えた時にこれもその人なんだと受け止められる、どんなことがあっても揺るぎない自分でいられることが、本当の意味での信じるということだと解釈したという。
確かに劇中のちひろはさまざまな出来事を経験し、これまで自分が信じてきたことがわからなくなってしまう。まさに見えていなかったものが見えてきた状態だ。そんな思春期ならではの心の動きを芦田はみごとに表現している。
目の覚めるような答えに感心していると、照れくさそうに「作品を通して、信じることってなんだろう、自分がすべてを話せる人、打ち明けられるような、自分が信じたいって思える人って誰だろう。大切な人って誰だろうとすごく考えたんです」とはにかんだ。
では彼女自身はいま、どんなことを信じているかというと、「努力することは自分の何かになるということです」と力強い言葉が返ってきた。「結果として、実ったとしても、成功できなくて挫折に繋がったとしても、悔しい思いをして、どん底に突き落とされた時にまた努力して頑張ろうと思える。そういう経験は大事なことだし、決して裏切らないと思います」ときっぱり。
「こうやって言葉に出して言えるようになったのは最近ですが、目標を持って頑張ることは、たとえ高い目標でなく身近なことでも、大切にしています」と話す姿に、幼い頃から天才と呼ばれながら、その陰で人知れず、人一倍努力してきた様子が目に浮かぶ。
自分の言葉で語りだした16歳。最後に「身近なテーマですが、なかなか立ち止まって考える機会がありませんでした。今回、作品を通じて考えてみましたが、決してこれが正解だと思えるような答えに出会ったわけではありません。また変わっていくかもしれませんが、これがいまの私なりの答えなのかなと思っています」と付け加えた。信じる、信じたい、信じてみようと微妙に変化し続けるちひろ。その繊細な演技は、16歳の芦田愛菜が見つけた信じることへの答えに裏付けられている。(取材・文:高山亜紀)
映画『星の子』は全国公開中