柳楽優弥「鬼滅にまで響かせる…」北斎の凄さ実感 『HOKUSAI』世界最速上映
第33回東京国際映画祭
第33回東京国際映画祭で9日、柳楽優弥&田中泯ダブル主演の映画『HOKUSAI』の世界最速上映が行われ、柳楽と田中、橋本一監督、企画・脚本の河原れんが舞台あいさつに登壇。コロナ禍において公開が延期されていた本作をお披露目できる喜びを語った。なお、併せて同作の公開時期が2021年5月に決定したことも発表された。
本作は、幕府に風俗が厳しく取り締まられていた江戸時代後期を舞台に、浮世絵師・葛飾北斎と彼に影響を与えた人物たちとのエピソードを軸に、北斎が描いた「三つの波」の秘密に迫る物語。北斎の青年期を柳楽、老年期を田中が演じるほか、稀代の版元(プロデューサー)・蔦屋重三郎に阿部寛、美人画の大家・喜多川歌麿に玉木宏、戯作者の柳亭種彦に永山瑛太らが名を連ねている。当初、今年5月29日に公開される予定だったが、コロナ禍の影響で来年に延期されることが4月に発表。東京国際映画祭ではクロージング作品として上映された。
柳楽は「本日は劇場に来ていただき、ありがとうございます。葛飾北斎(の青年期)を演じるということで興奮したのは、チャンバラとか殺陣ではなくて、時代劇でアーティストをやるのが魅力だと思うので楽しんでください」、田中は「北斎の年をとってからのシーンで、自分はご覧の通りの人間でありまして、嘘偽りなく年齢を感じながら演じました。本当に光栄な役でした。小さいころから北斎を、僕は知っていたというとおかしいですが、北斎に触れることの多い人生だったと思います。北斎を身をもって演じることができるのはこの上ない幸せでした」とそれぞれ挨拶。
青年期の資料がほぼ残されていない北斎だが、MCが大ヒット中の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主人公・炭治郎の技「水の呼吸」が北斎の波をイメージしたと言われていること、現代のエンタメに影響を与えていることに触れ、どのように北斎のキャラクターを作っていったのかという話題に。
柳楽は「例えば、同世代の写楽、歌麿とか、当時のスターが出てくるなかで、悔しいとかうまくなりたいとかいうことは、変わらないんじゃないかなと。北斎が波に感動する理由を、撮影していく中で見つけたいなというのがテーマとしてあって。なんで、ここまでして波に。『鬼滅』にまで響かせる……それびっくりして、いいこと聞いたなと思いましたが、なんで波を描くんだろうと。人生をあきらめようとする覚悟があったんじゃないかなと。それくらいに画を情熱をもって、覚悟を決めていったんじゃないかなと。そういう風にやらせていただきました」と青年期の北斎への取り組みを語った。
田中は、コロナ禍をふまえながら本作の上映に向け「日本の劇場で今日これから上映されるわけですが、今ヨーロッパは大変なことに。世界で映画が観られていない、本当に特別な時間を皆さんが体験なさるということだと思います。ぜひ大切に時間を使ってください」と呼びかけた。
企画・脚本の河原は北斎の娘・お栄役で出演も兼任しているが、「葛飾北斎は、江戸時代に90年生きた人。それをわずか90分にするのは不可能」「90回以上引っ越した、3万枚以上絵を残したとか言われているけど、たくさんある逸話をまとめたら、ただのダイジェスト映像になってしまう」など脚本執筆に至るまでの工程に触れつつ、「北斎のどんなキャラクター像を描きたいかなと思うと、柳楽さんと田中さんの北斎に通じるけど、美しい不器用さが大好きで、北斎もきっとそういう人であったし、愚直に作り出して何かを世に伝えようとした人じゃないかなと思いました」とコメント。橋本監督は波の絵に焦点を当てた理由を、「なぜ北斎の絵が世界中で認められているのか、原点に帰るわけではないですけど、複製とはいえ撮影中に北斎の画を見るとわき上がってくるもの。波の絵のワクワク感はどう込めることができたのか。それを探すのがこの映画を作ることなのかと思いました。日本語が分からない人にも伝わるようにということを目指しました」と語った。(取材:壬生智裕 文:編集部・石井百合子)