三浦春馬さんのために真ん中をあけるキャスト陣「春馬とともにここにいる」

　三浦春馬さんの主演映画『天外者（てんがらもん）』の公開記念舞台あいさつが12日に都内で行われた。キャスト陣と監督は故人との思い出を振り返るとともに、最後の写真撮影では春馬さんのために真ん中の場所をあけて写真に収まった。

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　本作は激動の幕末から明治初期を舞台に、武士の魂と商人の才を持ち、薩摩藩士から明治政府役人を経て実業家となり、商都大阪の礎を築いた五代友厚（春馬さん）の歩みを描く歴史青春群像劇。この日は三浦翔平、森永悠希、森川葵、蓮佛美沙子、筒井真理子、田中光敏監督が来場した。

　大勢の観客を前にした三浦翔平は「皆さまのおかげでこうやって幕を開けることができて、本当に感謝しています。春馬とともにここにいるので、今日はお願いします」と感無量の表情。田中監督も「主演の三浦春馬を中心に、みんなで力を合わせて作りました。ごゆっくりと映画を味わってください」と続けた。

　映画が公開されることとなり、田中監督も「今回のこの作品は僕にとって格別というか、一生心に残るものになった作品ですね。作りながら何度も映画が本当にできるのかと思いました。コロナだったり、春馬くんのこともそうですが、いろんなことがあって。たくさんの人が映画館に駆けつけてくれたことに感謝申し上げます」と感無量の表情。三浦翔平も「本当に感無量です。いつ公開できるかわからなかったので、幕が開けたことでやっと始まったという感じですね」と付け加えた。

　登壇者の口からは、次々と春馬さんは「気遣いの人だった」という言葉が述べられた。三浦翔平は「ご飯を食べにいった時に、春馬から『坂本龍馬を翔平にやってほしい』と。もちろん春馬がそう言ってくれるならやりますよと。正式オファーがくるのを待っていますと言いました」と振り返ると、春馬さんとは高校の同級生だったという蓮佛も「わたしも正式なオファーをいただく前に一緒にご飯を食べていて。おもむろに企画書を取り出して、こういうのがあるんだけど、と言われて。いつからプロデューサーになったのと思いましたが、そんな成り行きで夫婦として共演できたので、めちゃくちゃうれしかったです」と述懐。

　その言葉を聞いた田中監督も「配慮の男なんですよ。まっすぐだし、いい作品を作りたいという思いで、影で支えてくれた。実はこういう（プロデューサー的な）話を聞くのはプロモーションに入ってから。この人は（この役に）どうかと思っていた人を、彼自身が裏で支えてくれた。作り手にとってはありがたいこと。これぞ座長というか、頼りになる主演ですね」としみじみと語る。

　本作のメインキャストとなる4人は多忙のため、全員でリハーサルができない時もあったというが、田中監督によると、そういう時も春馬さんが影で支えてくれたのだという。「食事のシーンでも、翔平くんがいなかったんですが、『監督、大丈夫です。東京に帰って雰囲気を伝えて。読み合わせをするんで』と言ってくれた。次に翔平くんが（撮影現場に）来た時はしっかりと役に入り込んで作ってくれた。本当にすばらしい役割を果たしてくれた」。

　三浦翔平も「彼は本当に、自分のことよりも、共演者だったり、スタッフさんだったり、そういう方たちを自分以上に見て、大切にしていた人だったので。常に気にかけて、まわりを見て。誰かが元気がなさそうな時はどうしたのと声をかけるような男なんで。座長としてもそうだけど、人としても本当に素晴らしい男です」と春馬さんの人柄に触れた。

　残念ながら、春馬さんは完成した作品を観ることはかなわなかったという。「ラストのシーンのアフレコの時に、編集の一部分だけ観てもらっただけでした」と振り返る田中監督は「彼はにこやかに作品を観て、うっすらと涙を浮かべて。あの時は本当に頑張ったんで、感激しましたと。本当に真摯（しんし）に頑張ったんだなとその時に思いましたね」とコメント。もし春馬さんがこの場にいたらーーそんな問いかけに「なんて言うんだろうな」とつぶやいた三浦翔平は、「たぶんそこにいると思うんですが、照れてるんじゃないですか。でもこうやって幕が開いて、皆さんにお届けできることを誰よりも感謝していると思うし、誰よりも悔やんでいるかもしれない。でもたぶんあのさわやかな笑顔で、ありがとうと言っているんじゃないですかね」としみじみと語った。

　そして最後の写真撮影の際、ステージに並んだ登壇者たちは真ん中は春馬さんのためひとり分の場所をあけて撮影を行ったこの日。最後まで春馬さんへの思いがこもった舞台あいさつとなった。（取材・文：壬生智裕）

映画『天外者（てんがらもん）』は公開中