英スパイ小説家ジョン・ル・カレさん死去『裏切りのサーカス』原作
冷戦を背景にしたスパイ小説などで知られ、多数の作品がドラマ化・映画化された英小説家ジョン・ル・カレさんが、現地時間12日の夜に、英コーンウォールの病院にて、肺炎のため89歳で亡くなったと、エージェントを務めるカーティス・ブラウン社CEOのジョニー・ゲラー氏が、公式サイトで発表した。
ジョン・ル・カレ(本名:デイヴィッド・コーンウェル)さんは、1931年10月19日にイギリス、ドーセットのプールで生まれた。ベルン大学とオックスフォード大学のリンカーン カレッジで学び、イートン校で教鞭を取る。英国情報部の一員として、主に旧西ドイツで働いた。
その経験を元に小説を執筆し、1961年に「死者にかかってきた電話」でデビュー。名作として名高い3作目「寒い国から帰ってきたスパイ」で世界的な評価を得る。特に、初老のイギリス情報部員ジョージ・スマイリーが登場するスパイ小説で知られ、2011年に映画化された『裏切りのサーカス』(原題:ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ)ではゲイリー・オールドマンが、1970年代のドラマではアレック・ギネスがスマイリーを演じた。
その著書は多くの賞を受賞し、映像化も多数。映画では『テイラー・オブ・パナマ』(2001)、『ナイロビの蜂』(2005)、『誰よりも狙われた男』(2013)など、ドラマでは「ナイト・マネジャー」(2016)などで知られる。
ゲラー氏によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と死因に関係はないという。同氏は声明で「我々は、英文学における偉大な存在を失った。偉大なウィット、優しさ、ユーモア、知性を持った人だ。私は、最愛の友にして、師匠でもあり、インスピレーションを与えてくれる人を失った」と追悼。遺族も「私たちは皆、彼の死を深く悲しんでいます」と声明を発表している。(西村重人)