川本喜八郎没後10年、人形アニメの先駆者二人のスゴすぎる作品展が開催
アニメーション作家・川本喜八郎(1925~2010)の没後10年、同・岡本忠成(1932~1990)の没後30年にあたる今年、国立映画アーカイブ(東京・京橋)で二人の足跡をたどる展覧会「川本喜八郎+岡本忠成 パペットアニメーショウ2020」が開催中。現在、株式会社WOWOWプラス(東京・赤坂)では二人の傑作アニメーションを4Kデジタル修復するプロジェクトも進んでおり、改めて日本の立体アニメーションの発展に大きな功績を残した活動が注目されそうだ。
川本と岡本はともに、日本の立体アニメーションの礎を築いて中国でも活躍していた持永只仁(1919~1999)のもとから巣立ったが、その後の経歴は対照的。川本はチェコに留学してアニメ界の巨匠イジー・トルンカ監督に師事。帰国後は古典を題材にしたNHKの「人形劇 三国志」や同「人形歴史スペクタクル 平家物語」を手がけたことで知られる。
一方の岡本は、和紙や毛糸、粘土など多彩な素材を用いて、大貫妙子が作詞・作曲・歌を手がけたNHKの子ども向け歌番組「みんなのうた」の「メトロポリタン美術館」の映像や、星新一原作の『ふしぎなくすり』(1965)や『ようこそ宇宙人』(1966)などのアニメーションを制作した。
そんな盟友でありライバルだった二人が共に1972年から1980年に行っていたアニメーション作品と人形劇の上演を合わせた公演が「パペットアニメーショウ」。今回のタイトルはその公演名から名付けられたもので、中でも二人のアニメーション作品をクローズアップしている。展示されているのは制作で実際に使用された人形はもちろん、絵コンテやセル画、シナリオなど約90点。
中には、当初は人形アニメーションとして構想されていた、セルアニメーション『注文の多い料理店』(1993。岡本が製作していたが途中で急逝したため、川本が後を引き継ぎ完成させた)の、テスト撮影制作用の人形や、1972年に行われた「パペットアニメーショウ」の公演に駆けつけた際の黒柳徹子、淀川長治さん、永六輔さんらの写真も展示されている。
本展企画担当の国立映画アーカイブ主任研究員・岡田秀則は「2人は活動も対照的なら、映像制作で使用した人形も、川本が球体関節を用いて形成していたのに対して、岡本はワイヤー使用と骨組みが違う。その辺りも注目していただけたら」と語った。
期間中の2021年2月27日と3月6日には、2人の関連作品を同アーカイブ小ホールで上映する(上映作品は後日発表)。さらに前述したWOWOWプラスによる4Kデジタル修復作品は、2021年に東京・渋谷のイメージフォーラムにて劇場公開予定。川本の『道成寺』や岡本の『おこんじょうるり』などが新たによみがえるという。(取材・文:中山治美)
「川本喜八郎+岡本忠成 パペットアニメーショウ2020」は2021年3月28日まで、国立映画アーカイブ展示室にて開催中