『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』興行収入歴代1位までの軌跡を振り返り
人気アニメ「鬼滅の刃」の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(以下『鬼滅』)の最新の興行収入が28日に発表され、公開初日から73日間で興行収入324億7,889万5,850円、観客動員数2,404万9,907人を記録。これまで『千と千尋の神隠し』(2001・316.8億円)が所持していた歴代1位の記録を更新した。ここでは興収、動員などの数字の推移をもとに、同作のヒットの軌跡を振り返ってみたい。
10月16日に初日を迎えた同作は、全国403(IMAXシアター38館を含む)の映画館で公開。他作品の公開延期などが相次いだこともあり、複数のスクリーンで1日20~30回以上、上映する劇場も相次いだ。特にTOHOシネマズ新宿では、早朝から深夜まで、1日の上映回数が42回を数えたことが驚きとともに報道され、『鬼滅』フィーバーが広く知られるきっかけとなった。
各地の映画館は活況を呈し、公開初日から3日間で興収が46億2,311万7,450円、動員342万493人を記録。初日の16日の興行成績は、日本国内で公開された映画の平日における興収・動員ともに歴代1位。また、週末となる17日18日も、土日における日本国内で公開された映画の興収・動員ともに歴代1位となった。
さらにその勢いはとどまることを知らず、公開より10日間で興収107億5,423万2,550円、動員798万3,442人と、たったの10日間で興収100億円を突破。ちなみに近年のヒット作が興収100億円を突破したのは、『アナと雪の女王』(2014)で37日、『君の名は。』(2016)で34日、『天気の子』(2019)で28日。そしてそれまで歴代1位だった『千と千尋の神隠し』でさえ、100億円突破に25日かかったことを考えても、そのスピードは驚くべきものがある。
通常の作品ならば映画館の上映館は週を追うごとに少なくなっていくのが通例だが、『鬼滅』の上映館は微増しているのが特徴。3週目には全国411(IMAXシアター38館含む)の劇場で公開となり、公開17日間で興収157億9,936万5,450円、動員1,189万1,254人を記録。動員1,000万人を突破した。そして、4週目は興収204億8,361万1,650円、動員1,537万3,943人で、興収200億円、動員1,500万人を突破。この時点で『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001・203億円)を抑え、歴代5位につける。
5週目の上映館は2館増え、全国413(IMAXシアター38館含む)の映画館で上映。興収233億4,929万1,050円、動員1,750万5,285人となった。さすがに6週目あたりになると、その勢いも緩やかになってくるが、それでも6週目の上映館は1館増の、全国414(IMAXシアター38館含む)の映画館で上映。興収259億1,704万3,800円、動員1,939万7,589人を記録。この時点で『アナと雪の女王』『君の名は。』を抑え、歴代3位につけた。
そして7週目には、興収275億1,243万8,050円、動員2,053万2,177人を突破。いよいよ『タイタニック』(1997・262億円)を越えて歴代2位につけた。さらに8週目は上映館が1館減り、全国413館(IMAXシアター38館含む)に。興収288億4,887万5,300円、動員2,152万5,216人となった。9週目は全国379館(IMAXシアター38館含む)となったが、興収302億8,930万7,700円、動員2,253万9,385人を記録した。10週目の興収は311億6,664万7,900円、動員2,317万5,884人となった。公開から10週連続での首位獲得は、興行通信社が全国ランキングの発表を開始した2004年以来、初のこととなる。ちなみにそれまで記録を保持していたのは、それぞれ9週連続1位を記録した『ハウルの動く城』『アバター』『君の名は。』の3本となる。
そして12月26日より、全国82館の劇場でMX4D、4DXの上映が開始。内訳は全国379館(IMAXシアター38館、4D82館含む)となり、さらに多くの観客にアピール。12月26日の興収が5億5,458万3,650円、動員35万5,697人、12月27日の興収が3億5,303万4,550円、動員21万9,943人だったことから考えると、26日時点で歴代興収1位を更新していたことになる。
なお、週末土日の興収(1000万円以下は四捨五入)の推移で見てみると、34億(1週目)→30億(2週目)→25億(3週目)→18億(4週目)→15億(5週目)→10億(6週目)→10億(7週目)→7億(8週目)→9億(9週目)→4億(10週目)→9億(11週目)となる。こうして並べて見ると、10週目の4億円というのは非常に少ない数値に見えるかもしれないが、他作品なら時期が違えば興収ランキング1位を十分に狙える数値である。逆に言えば、『鬼滅』がそれほどまでに勢いがもの凄かった、とも言える。
『千と千尋の神隠し』の公開時は、シネコンの普及や、米国アカデミー賞を獲得したことなどもあり、1年以上のロングランを続けた。当時はまだ新聞広告の勢いが強かった時代で、毎週のように追告(公開後の広告)を出し、宣伝を行っていた。だが今回の『鬼滅』はSNSや配信など、ネット時代の波及効果がヒットの後押しとなったことは間違いない。また、男女問わず劇場に足を運んだということも大きかったようにも思われる。今後、『鬼滅』の勢いがどこまで伸びるのか。興味は尽きない。(壬生智裕)