劇場版ゼロワン「仮面ライダーアバドン」に受け継がれた昭和の意匠
人気特撮ドラマ「仮面ライダーゼロワン」の新作映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』に登場する仮面ライダーアバドン。イナゴの群れのように、軍団でゼロワンたちを苦しめたライダーのデザインについて、チーフプロデューサーの大森敬仁、商品企画担当の井上光隆(バンダイ)、デザイン担当の山下貴斗(プレックス)が明かした。
仮面ライダーアバドンは、世界滅亡を図る「楽園ガーディア」の創造主・エス/仮面ライダーエデン(伊藤英明)に従うテロ集団が変身する仮面ライダー。ネーミングの基になった”アバドン”とは、「ヨハネの黙示録」に登場する奈落の王とも称される悪魔で、イナゴやバッタの大量発生による「蝗害」(こうがい)を象徴する存在ともいわれる。
「仮で”仮面ライダーイナゴ”になっていたネーミングをちゃんと決めようとなった時に、脚本の高橋悠也さんから出た名前です。高橋さんは、劇中のエスの演説も旧約聖書を参考に書いたりしていた。役名なども、ほとんどが旧約聖書から来ています」(大森)
デザインチームには、大森から「今度の映画にはイナゴライダーが登場します」と伝えられていたはずだったが、「何かの間違いで、僕らは当初、イナゴレイダー(怪人)と勘違いをしていたんです」と明かす井上。そこで、ユニークな取り違えが起きた。
「仮面ライダー」の怪人デザインは、基本的に専門の作家に依頼される。しかし、本作では当初、怪人も”ライダー”と呼称する案があったことから、プレックスが担当した。山下は「ライダーデザインに傾注するために、怪人はコンセプトとデザインルールを固めた段階で他のチームにお願いしていたんです。そこに”イナゴレイダー”のオーダーが来たので、弊社の久田将史がデザインを手掛けました。本人は後から『ライダーだったの?』と驚いていましたね(笑)」と明かす。
アバドン軍団は、ベル(福士誠治)、ムーア(畑芽育)、ルーゴ(小山悠)、ブガ(後藤洋央紀)という4人のリーダーが統率しており、基本的なデザインは同じだが、肩や配管のようなマフラー部分の色やデザイン、武器で変化をつけた。久田氏がモチーフに採用したのが、昭和ライダーファンにはおなじみの「ショッカーライダー」だ。
「大量のイナゴのレイダー(怪人)ということで、久田がショッカーライダーのデザインをレイダーのルールに落とし込んでいきました。レイダーの素体は、バルカンやバルキリーの色違いなので、そこにモチーフのアーマーを着けていく方向です。全身にパイプを張り巡らせて、マフラー部分や触覚を作った。ショッカーライダーというモチーフが作用して、結果的にかなりライダーらしいデザインになっていると思います」(山下)。
大量の軍団となって襲い来る、戦闘員のような役割を果たすアバドンだが、大森によると、今回、最も手がかかったライダーだったようだ。「世界を覆い尽くすイナゴの大量発生ということで、今まで造型したライダーの中で最も多い数を作りました。劇場版でもあまりない規模の数で、これが大変でした」(編集部・入倉功一)
『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』『劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本』は全国公開中