大人キャストが小学三年生を演じる挑戦「コスプレでも“ごっこ”でもない笑いを」テレ東Pが語る
現在、テレビ東京系の深夜ドラマ枠で放送中の「直ちゃんは小学三年生」(毎週金曜深夜0時52分~)。杉野遥亮ら4人の俳優が小学三年生を演じる斬新な設定で話題を呼んでいるが、本作が生まれた経緯について、同局のプロデューサー・青野華生子が語った。
本作は、主人公の直ちゃん(杉野)、金持ちで賢いきんべ(渡邊圭祐)、貧しくガサツなてつちん(前原滉)、泣き虫の山ちょ(竹原ピストル)ら放課後を一緒に過ごす4人の小学三年生の日常を描く物語。企画の始まりは昨年春頃。青野プロデューサー(以下、青野P)が本作の監督を務めた近藤啓介に声をかけ、オリジナルドラマを制作すべく会議を行った中で生まれたという。4人の少年グループの物語になったのは、青野Pが往年の青春映画『スタンド・バイ・ミー』やブラックコメディー・アニメシリーズ「サウスパーク」、海外ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」などに影響を受けたことによる。
毎回冒頭で「このドラマの登場人物は誰がなんと言おうと小学生です ご理解ください」のテロップが流れる通り、小学生を演じるキャストは杉野遥亮(25)、渡邊圭祐(27)、竹原ピストル(44)、前原滉(28)と平均年齢30歳越え。しかし、本作は「大人が小学三年生ごっこをしていたり、コスプレをしている趣旨ではない」と青野P。ジャンルとしてはコメディーだが、「観た方が今の自分を見つめ直したり、周りを見るきっかけに少しでもなったらいいなと。『笑っておしまい』ではなくて、心がほぐれたりちょっと生きることが楽になったり、そういう後味を残せたらと思いました」とコンセプトを語る。監督には「グダグダになったり、コントっぽくならないようにしてほしい」と伝えたと言い、監督にも「声を変えたり、子どもっぽい演技をしてもらうつもりはない」という認識があった。
小学生らしさを表現するにあたり重要になったのが衣装。青野Pは「リアリティーよりデフォルメしてでも、とにかく小学生に見えることが大事で。衣装は割とすんなり決まりましたが、悩んだのがきんべ役の渡邊圭祐くん。一発目の衣装合わせが彼だったのですが、圭祐くん、何を着てもオシャレになっちゃうんですよね(笑)」と振り返る。デザインにもこだわりがあり、直ちゃんのキャップは、青野Pが懇意にしている浅草の衣料品店「The Three Robbers」に発注し、名前のイニシャルを入れたオリジナルキャップを作ったという。ちなみに、デザインは「ストレンジャー・シングス」の登場人物ダスティン・ヘンダーソンのベースボールキャップを参考にしている。
また、本作で描かれる小学生「あるある」も視聴者の間で話題に。4人が集うのは公園、駄菓子屋、秘密基地など。カードを地面にたたきつけた時の音の大きさを競ったり、グリコ(じゃんけん遊び)をしたり、ジャングルジムから飛び降りる高さを競ったり、遊びがアナログなところも特徴だ。「脚本家の熊本浩武さんは昭和世代ですが、わたしも監督も平成世代です。駄菓子屋も秘密基地も、『何時何分何秒、地球が何回まわったとき?』といった言い回しも、スタッフと脚本の打ち合わせしている時や撮影現場で出演者たちと話している時も『あったよね』と共通認識があって。そういった小学生の文化は、代々受け継がれているものなのではないかと思っています」
主演の杉野は、同枠の次クール「東京怪奇酒」(2月19日スタート)でも主演を務めることが決定しており、異例の2クール連続主演となる。青野Pはかねてから杉野のTwitterに関心を持っていたといい、出演の経緯についてこう語る。「おととしぐらいから杉野くんのTwitterでの思いの伝え方や発信の仕方を拝見していて、『嘘をつきたくない人なのかな、おもしろい人だな』って気になっていたんです。それで直ちゃんにピッタリだなと思ってお声がけしたら、すごく喜んでくださって。運よくスケジュールも合ってトントン拍子で進みました。同時に、1月期後半の番組をどうするかという話が社内の企画会議で上がった時に、誰かが「プロデューサー(太田勇)が企画した『東京怪奇酒』と通しで、杉野さんにやっていただけたらテレ東として初の試みになるし、面白いのでは』という話になって、ご相談させていただきました。直ちゃんとは全く違うテイストのホラーコメディーなので、こちらもぜひご覧いただきたいです」
22日放送の「直ちゃんは小学三年生」3話では、直ちゃんのクラスで男子と女子のバトルが勃発。ゴミ拾い当番の日に遊んでいた直ちゃん、きんべ、てつちんを鎌田(堀田茜)が注意するも、直ちゃんたちは聞き耳を持たず、怒った鎌田がほかの女子に愚痴を漏らしたことから騒動が巻き起こる。(編集部・石井百合子)