深川麻衣、グループ卒業から5年 女優としての覚悟と責任感
乃木坂46を卒業して、約5年の歳月が経過した女優・深川麻衣。映画『おもいで写眞』(公開中)で2度目の映画主演を務める深川が現在の思いを語った。
深川麻衣が“笑顔封印”で挑んだ『おもいで写眞』本予告【動画】
『おもいで写眞』は、東京でメイクアップアーティストの仕事を夢見て上京するも挫折し、祖母の死を機に地元・富山に戻ることになった音更結子が主人公の物語。町役場から遺影写真の撮影の仕事を頼まれ、お年寄り一人一人と向き合うなかで結子は人として成長していくことになる。
卒業したときは「さまざまな人生をシミュレーション」
深川が演じるのは、嘘を嫌い、不器用なほど真っすぐに生きてきた29歳の結子。深川自身も地元の静岡から上京したこともあり、同い年の主人公には共感も大きかったという。「境遇も似ているし、わたしも『頑固だね』と言われることもありますが、それでも思っていても言えないことがある。結子は八方美人とはほど遠い、包み隠さず思っていることが顔や声に出る、不器用だけど愛すべき存在だなと思います」
物語では、結子は後悔を抱えつつも夢を諦めて実家に帰ってくるが、深川自身は2016年まで乃木坂46のメンバーとして活躍し、その後は女優の道を踏み出した。これまでの決断について「直感を信じて決めてきた」というが、それでもグループ卒業にあたっては「事務所が決まるまでは不安でした」と語る。
「お芝居をやっていきたいと思って、さまざまな人生をシミュレーションしました。卒業はしたけど自分をとってくれる事務所がなかったら、事務所に入っても演技の仕事を続けられなかったら、あるいはやりたいことができずに静岡に帰るのか、東京で別のことをやるのか……。リアルなところまでシミュレーションして、うまくいかなくて『あのとき卒業しなければよかった』と思うくらいだったら、辞めないほうがいい。グループとしての活動はやりきったから後悔はまったくないだろうな、と」
「前よりも欲が出てきた」
その後は、2018年の初主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』をはじめ、連続テレビ小説「まんぷく」、ドラマ「日本ボロ宿紀行」「まだ結婚できない男」、映画『愛がなんだ』『空母いぶき』『水曜日が消えた』といった話題作へコンスタントに出演を果たした。初主演のときは「右も左もわからない状態で、自分を取り繕ってもしかたないので、わからないものはわからない。教えてください! という気持ちで臨んでいました」と振り返る。
卒業から5年、女優としての気持ちにも変化が生まれてきた。「今回も自分のことでいっぱいいっぱいになることもあったのですが、前よりも欲が出てきたんです。以前は監督が表現したいことに柔軟にこたえていく感覚でしたが、役に責任を持っているからこそ、結果がどうであったにせよ、自分の意見を伝える、やりたいことを話し合うことが大事だと思うようになりました。参加している一人として『パンバス』よりぶつかれたと思います」
本作では後悔もテーマとなっているが、深川は「最初に完成した作品を観るときは、自分の“粗探し大会”になっちゃうんです(笑)。ここがああだったら、こうだったらなと思うのですが、演じたときに後悔なくできていれば、それが自分のベストだったんだと思える」と持論を明かす。「将来、こういう仕事がしたい、こういう人になりたいという目標があるから、今を頑張るしかないと、撮影現場ごとの目標を立てるようになりました。今回も“怒り”の感情に向き合って、監督にも後悔しないように自分の思いを伝えていこうと臨みました」
20代最後に思う“これから”
そんな本作は、深川が所属する芸能プロダクション・株式会社テンカラットの25周年企画。その作品で座長を担ったことに「エンドロールを見て改めて重みを感じた」という。今回は子役を除いて最年少となったが、20代最後の年を迎えて気持ちに変化もある。
「30歳を過ぎてからのほうが人生は楽しそうだなと根拠なく思う部分もあるのですが、仕事上でも女性としても見られ方は変わってくるはず。いただく役も変化すると思うので、楽しみと緊張感と半々です。でも、今回の映画で吉行和子さんや古谷一行さんという圧倒的な大ベテランと共演させていただいて、自分が培ってきたものを曲げないだけではなくて、監督からのアドバイスも受け入れて楽しそうに演じることができる、こんな年の重ね方をしたいなと思いました」
映画やドラマにコンスタントに出演を重ね、女優としてのキャリアを着実に重ねている深川。「どういうお仕事が来るのかは縁ですし、評価とイコールだと思います。いろいろな場所を経験したいですね」と語る。まもなく迎える30歳について「30代というのは、それ以降の年齢に繋がる大事なときだと思うので、失敗してもいいから挑戦を忘れない年にしたい。挑戦することがだんだん怖くなってくるはずなので、止まらずに行きたいです」
一方で「楽しむ気持ちと余裕も持ちたいと思うようになった」とも。「仕事が全部の軸になっちゃうときがあって、仕事がうまくいかないと全部がもっていかれてしまう。まずは深川麻衣という人があって、仕事がある。帰れる場所があるというのが大事なので、遊ぶことや趣味も楽しんでいきたいですね」(編集部・大内啓輔)