ケイト・ウィンスレット、歴史に埋もれた女性学者役に没頭「最大の挑戦だった」
女優のケイト・ウィンスレットが、文化団体アメリカン・シネマテークの主催した、女性同士の愛を描くフランシス・リー監督による主演作『アンモナイトの目覚め』のバーチャルパネルディスカッションに参加し、役づくりや作品にかける思いを語った。(吉川優子)
本作の舞台は19世紀のイギリス。ケイトは、海辺の町で化石を採集して生計を立てている、メアリーという実在した古生物学者を演じている。ある時メアリーは、裕福な化石収集家の夫を持つ若き女性シャーロット(シアーシャ・ローナン)を、病気療養のため家に滞在させることになり、彼女との間に愛が生まれる。
ケイトの抑えのきいた演技も実に秀逸な本作。脚本を読み、どうしてもメアリー役をやりたかったという彼女だが「一体どうすれば演じられるんだろうって、とても怖かったんです。なぜなら私は、彼女と全く違う人間だから。私は自分の感情を表すのに身体をよく使うけど、メアリーはとても深い感情を表現する時も、肩をすぼめたりするだけ。私にとって、それが最大の挑戦でした。(演技から)自分自身を取り除くことに最善を尽くさないといけなかったんです」と明かす。
いつも古びた服を着て、化粧っ気もないメアリー。ケイトは、彼女が「全盛期をすぎている」ことにも惹かれたという。「歴史的な人物を描く時は、その人物の最盛期を描くことが多いです。でも、年齢を重ねて疲れている40代のメアリー役の方が、私には興味深かった。過酷な現実と向き合い、毎日重労働をしているのに全くお金を稼げない彼女。役づくりにここまで没頭したことはありませんでした」
撮影前には、化石の採集方法を学ぶなど、入念にリサーチを重ねた。メアリーの生活を実感するために、撮影中も海辺の小屋に一人で住んでいた。現実のメアリーは、古生物学に大きく貢献する発見をしていたにもかかわらず、この分野は男性に独占されていたため、当時は正しく評価されることがなかったという。「男性でも女性でも、彼女のロマンスの歴史についての記録は何も残っていないんです。家父長制の社会に生きていたことや、本当に素晴らしい女性だったことを考えると、この物語において、リー監督がその相手に女性を選んだのは適切なことだと思います」とケイトは語る。
メアリーとシャーロットの関係は自然に進展していき、激しく愛を交わす場面も。ケイトにとって、2人のストーリーを肉体的に語ることは最も大切なことだったという。「シアーシャとは、お互いの動きについてしっかりと話し合いました。クルーも理解できるように、動きを決めることも重要でしたね。私は同性のつながりについて、この映画ですごく学んだと思います。以前、LGBTQの役を務めたことはあるけど、これはもっと強烈で、全く違う人生を送る2人の女性が恋に落ちて、とても深いつながりを持つまでを描いています。同性同士ということが、全くためらいや恐れなく扱われている。それはとても重要なことでした」。