『短篇集 さりゆくもの』監督、キャストが初日イベント
サトウトシキ監督や瀬々敬久監督など、映画界の異才たちに愛されてきたほたるが主導したオムニバス作品『短篇集 さりゆくもの』の初日舞台あいさつが20日、新宿 K’s cinema で行われた。
本作は、ほたるをふくむ5人の映像作家がメガホンをとった短編オムニバス作品。ほたるの『いつか忘れさられる』は、田舎の一軒家に暮らす主婦の姿をサイレントで描いた。ほたるも出演していた映画『色道四十八手 たからぶね』の製作中に急逝した故・渡辺譲監督(作品を引き継ぎ、完成させたのは井川耕一郎監督)のエピソードからインスパイアを受け、同作の残りフィルムをベースにした作品だ。
「『たからぶね』の撮影で残ったフィルムで短編を作りませんかということで、1本作ったんですが、35ミリフィルムで15分の作品をどう上映するかと思っていた。短編集で作ったらみんな観たいんじゃないかと思いました。そこで信頼している監督や、観てみたい監督に声をかけて一緒にやったということです」とほたる。「時間がかかりましたけど、今日上映できて本当にうれしいです」と晴れやかな顔を見せた。
監督の人選について「最初の頃から、山内大輔監督とサトウトシキ監督にはやってほしいなと思っていて。できれば自分も出たいなと思っていたのでうれしかったです」とほたるは続ける。ほたるとの名コンビで数々の傑作映画を生み出したサトウ監督も「お客さんの前で公開できてうれしいです」としみじみ。「2018年の春くらいに、ほたるさんが『名前のない女たち うそつき女』の上映に来てくれて声をかけてもらいました。すごく急ぎな感じがして、あわててバタバタした感じがしました」と笑いながら述懐した。
さらにほたるは「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の審査員をやった時に、男性の監督ばかりだったんです。だから自分がやるなら女性監督がいた方がいいなと思って。小口(容子)さんと小野(さやか)さんにお願いすることになりました。時間がかかったけど、できてよかったです」とほか監督の人選についてもコメントした。
サトウ監督の『もっとも小さい光』に主演したのは、2019年に急逝した故・櫻井拓也さん。共演者の影山祐子が「主演の櫻井さんがここに立つのをすごく見たかったんですが、代わりにここに一緒にいる気持ちです」と語れば、サトウ監督も「櫻井くんは2019年の9月24日に31歳で他界しました。大木萠監督の『花火思想』で主演を務めて。それが評価されました。急逝されてとても残念でしたが、こうやって映画が公開されて、彼も喜んでいると思います」と故人をしのぶひと幕もあった。(取材・文:壬生智裕)
『短篇集 さりゆくもの』は新宿 K’s cinema で上映中